さてホテルにチェックインも終わったし、晩飯までには大分時間がある。かといってしっかり観光する
程の時間はない。
「近場を散歩しながら紫禁城でも見に行こうか」王府井から歩いて行ける距離だ。
今は北京首都劇場の隣にいる。もし目の前の王府井大飯店に泊まることがあれば、そして、15階より上の
部屋で西向きの部屋が取れたならば、そして夕陽の美しい夕暮れであれば、息をのむような美しい紫禁城の
シルエットが部屋から眺めることができるのだそうだ。
わしらは贅沢を言わないで歩いて現物を見に行くのだ。
一旦ずずっと南に下がる。王府井大街の大通りの両側は観光客向けのいろんな商店がならんでいるが
いつ来ても再開発中だ。どんどん昔からの店はなくなっていくし、ちょっと中に入れば胡堂であった
ところもどんどん更地になっていって、次に来たときにはビルになっている。
古い教会を左にみて更に南に下ると歩行者天国に入る。信号を渡ってすぐの道の右側、新東安市場という
大きなデパートのようなビルの向かい側あたりにマンホールがあっていつも人だかりがしている。
井戸の跡だそうだ。王府にあった井戸だから王府井ということなのだ。
マンホールの蓋を見てもしょうがないから先に進む。
中国人の観光客で一杯だ。その間をあくせくと先に先に進むと東長安街の大通りに出る右の角に有名な
北京飯店がある。袁世凱が暮らしていたホテルだ。
「この裏に小吃街が集まってるんやで」北京が初めての人もいるから、知ったかぶりをして連れていく。
北京飯店の手前を右に折れたら、小吃の店や土産物の店がびっしりとひしめいていて簡単には通り抜けも
できないが、なんば歩きで人と人のあいだをすり抜けて結局は東長安街の大通りに出る。
この大通りを西に進む。10分ほど歩くと又人ごみだ。今度は前門の方や紫禁城に行く人、そこから
帰る人達なのだ。
「ちょっと影を歩こか」というほど暑くなってきた。人の圧力が強すぎて、鼻をぐしゅぐしゅしている
暇もない。信号の角々には公安のおまわりさんも立っていてどことなく緊張感も漂っている。
建物も巨大だからそれを囲む壁も巨大だ。なかなか入り口に行きつかないがやっと着いた。
右に曲がって天安門をくぐると正面に大和殿が見える。
「あの中が紫禁城、要するに故宮博物院ですわ」
「でもここは建物だけで、中身は蒋介石が台湾に持っていったんですわ」
この程度の知識はあるのだ。
構内は人であふれていて、どこでもカメラを構えてポーズをとっているが人の流れが気になる。
どう見ても向こうからこちらに流れているのだ。ちょっと焦ってきた。
「もしかしたら、もうチケット売り場を閉めてるんちゃうか?」
「4時すぎてるもんなあ」
やっぱりもう入れないのだ。事態を甘く見てあまり先の計算をしないでここまで来てしまった。
今更しようがない。「案内しますよ」とえらそうに言っときながらすごすごと帰るはめになってしまった。
「すいません」
東華門から直接外に出て、東に北にとじぐざくに戻る。巨大な胡堂街を通っていくが、来る度にこの辺は
どんどん新しい住宅街に変貌していっている。あの昔の味わいのある胡堂はもう北京からなくなっていく
のであれば寂しい話だ。
結局2時間以上歩いて、ドジを踏んで何の収穫もなかったが、なんば歩きのおかげで泥魚は元気なのだ。
「ところであんた何してんの?」
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