江蘇省食の旅-16、蘇州、老街、小巷

外は暑いが中は涼しい。美味しい物が一杯でもう食べられない。お酒も飲んだ。
もう動きたくない。が、やっぱり行こう。
一旦、ホテルにチェックインして蘇州の老街を探訪だ。
老師が約束通り、「芸圃」という庭園に連れて行ってくれるのだ。
「子供の頃からしょっちゅう行ってたところだよ」
ここまで来ると老師は絶好調だ。歩いていけないからとタクシーに乗る。
快調に市内を走って、裏通りに入って行った。老師は、楽しそうに運転手と喋りながら
「右に行け、左に行け」と細かく指図している。道が段々狭くなってきた。これほど暑い
と用があって通りを行き交う人は少ないが、日蔭を求めてぼーっとしている人はおおい。
喋る元気もないのかじっとしている。もう車は走っていなくて、時々電気自転車とすれ
違う。まっすぐ抜ける道などはなくなってきた。曲がって、曲がって先に進む。
どの家の前にも何かがある。自転車をおいてあったり、バイクがあったり、椅子があったり
セメントを広げて工事の準備をしていたりだ。それで道は見た目よりも更に狭いところを
通らなけらばならない。運転手の声が緊張してきた。
「行ける、行ける」
老師は全然問題にしていない。
「このまま進んで、あそこを右に曲がって、そのさきをちょっとカギ形に進んだら、
行けるよ」
車のまどから手を出してら家の窓や、おいてる自転車に簡単に触れそうだ。
乗っている我々も手に力が入って来た。
とうとう車が止まった。少し広いところから、右にまがりながら細い路地に入って行く
ところだ。「一旦左一杯に寄せんとあかんやろなあ」と思って見ているが、ちょうど
そこにバイクが置いてある。「降りて行ってバイクをのければいいのに」と思うが
「行ける」と判断したのか、バイクにぎりぎりまで寄せて右にハンドルを切って行く。
その先の細い路地の入口の右側の壁に当たりそうになって、どうしても入れない。
細かく切り返すが、タイヤが右側の壁の下の敷石を擦って、「ガリッ」と音をたてた。
運転手はだんだんうつろな顔になってきて、いたずらにこまかい切り返しをして行こう
とはするが行けないという動きばかりになってきた。
「運転代わったろか」と言いたいくらいだがそうはいかない。車内でも小さな、大きな
ため息が上がる。とうとう後ろから車がやってきて、「ブー」と鳴らしながら、右側の
空いた方を詰められた。もう絶対だめだ。
「私たちはここで降りましょう」いきなり老師が言いだした。
「この人の運転は未熟すぎます。私たちはここから歩いて行きましょう」
「この車はどうなるの?」
「自分でなんとかするでしょう」
自己責任の国だ。後ろを振り返りつつ先に行くしかない。

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