外は暑いが中は涼しい。美味しい物が一杯でもう食べられない。お酒も飲んだ。
もう動きたくない。が、やっぱり行こう。
一旦、ホテルにチェックインして蘇州の老街を探訪だ。
老師が約束通り、「芸圃」という庭園に連れて行ってくれるのだ。
「子供の頃からしょっちゅう行ってたところだよ」
ここまで来ると老師は絶好調だ。歩いていけないからとタクシーに乗る。
快調に市内を走って、裏通りに入って行った。老師は、楽しそうに運転手と喋りながら
「右に行け、左に行け」と細かく指図している。道が段々狭くなってきた。これほど暑い
と用があって通りを行き交う人は少ないが、日蔭を求めてぼーっとしている人はおおい。
喋る元気もないのかじっとしている。もう車は走っていなくて、時々電気自転車とすれ
違う。まっすぐ抜ける道などはなくなってきた。曲がって、曲がって先に進む。
どの家の前にも何かがある。自転車をおいてあったり、バイクがあったり、椅子があったり
セメントを広げて工事の準備をしていたりだ。それで道は見た目よりも更に狭いところを
通らなけらばならない。運転手の声が緊張してきた。
「行ける、行ける」
老師は全然問題にしていない。
「このまま進んで、あそこを右に曲がって、そのさきをちょっとカギ形に進んだら、
行けるよ」
車のまどから手を出してら家の窓や、おいてる自転車に簡単に触れそうだ。
乗っている我々も手に力が入って来た。
とうとう車が止まった。少し広いところから、右にまがりながら細い路地に入って行く
ところだ。「一旦左一杯に寄せんとあかんやろなあ」と思って見ているが、ちょうど
そこにバイクが置いてある。「降りて行ってバイクをのければいいのに」と思うが
「行ける」と判断したのか、バイクにぎりぎりまで寄せて右にハンドルを切って行く。
その先の細い路地の入口の右側の壁に当たりそうになって、どうしても入れない。
細かく切り返すが、タイヤが右側の壁の下の敷石を擦って、「ガリッ」と音をたてた。
運転手はだんだんうつろな顔になってきて、いたずらにこまかい切り返しをして行こう
とはするが行けないという動きばかりになってきた。
「運転代わったろか」と言いたいくらいだがそうはいかない。車内でも小さな、大きな
ため息が上がる。とうとう後ろから車がやってきて、「ブー」と鳴らしながら、右側の
空いた方を詰められた。もう絶対だめだ。
「私たちはここで降りましょう」いきなり老師が言いだした。
「この人の運転は未熟すぎます。私たちはここから歩いて行きましょう」
「この車はどうなるの?」
「自分でなんとかするでしょう」
自己責任の国だ。後ろを振り返りつつ先に行くしかない。
江蘇省食の旅-16、蘇州、老街、小巷
- 2010年8月24日
- 浙江蘇、安徽他/黄山、古鎮、墨硯紙筆
- あじあの街角, 古鎮の旅
- 3人