中国、廬山&安徽、文房四宝の旅−45、安徽、歙県上荘「老胡開文墨匠」工房にて。

安徽、歙県上荘「老胡開文墨匠」工房にて。

説明してくれている方の、墨匠の奥さんらしい、口調が段々と熱を帯びてきた。淡々と
工程を説明するのが普通の地味な墨作りではあるけど、この方々の思い入れは大変な
ようだ。

先程の煤と膠を練り合わせる工程の熱気がこの方にとりついてるかのように力強く
リズミカルにしゃべるんで聞いてる方もそれにつられて熱が入ってくる。
わしらが一番興味あったのが、材料が天然素材なのかどうかだった。しかし、煤も
膠もここでは作ってないようだ。その生産工程は企業秘密なんかどうかはわからんけど
どちらも天然のものだと言っている。
聞くところによれば、日本では上質の膠がとれなくなっているのだそうだ。需要が
少ないんで生産もなくなってきているというのが実態で、今の備蓄が何時まで持つか
心配だという話もあった。同じ様に天然の松の葉を燻した煤も天然のモノで生産してる
墨屋さんは殆どないということだ。殆どが備蓄のモノか化学カーボン使用なんやろか?
そのせいか、日本では松煙墨の方が油煙墨より貴重感が強い。
ところがここ聞いた話では中国では圧倒的に油煙墨の方が高いのだそうだ。
これも需給の問題なんやろか? 中国では油煙墨の方が好まれる? そやから高級品を
作る? あるいは松煙の煤が圧倒的に沢山できるんで値段が下がってる?
いずれにしても素材が豊富にあるのは良いことだ。やっぱり書の国やから
圧倒的な需要が生産を支えてるんやと思う。
難しい話は別にして練上がった墨が乾燥中だ。墨のええ香りがする。

朱墨も干してある。朱墨というのは普段あんまり使うことはない。書の先生かなんか
やったら弟子の処を直したりするのに使う。わしは先生やないんでそれはしない。
その代わりに篆刻の印稿を作る時に石の表面に朱をぬってその上に墨で書いたり、
紙に書いたものを転写したりする。朱の上に黒い字が書いてあると境界がはっきり
分かりやすいんで彫りやすいのだ。朱の色は高級なやつは辰砂からつくられるんで
えらく高い。わしらの用途では上等なやつは必要ないかも知れんけどやっぱりエエもんと
聞くとつい気持ちがそっちに行ってしまう。

ザクッと干してるんは安モンやから? 丸いから?

勿論整形して固めるだけななくて表面には模様を入れていく。

それぞれの墨匠毎に独自の模様があるはずなのだ。特にここは老胡開文ということで
安徽省伝統の墨である証の模様が押されていく。

前にもブログに書いたけど、この模様が芸術的となれば後世にその名が残ることに
なるんで恐ろしい。
朱墨に模様を入れる人もいる。

字や模様に色を付けたり、金粉を塗ったりする人もいてる。

こうやって墨ができていくのだ。

淡々と見るしか無い風景やのに、解説のおばちゃんに熱意を込めて話をされると、
それが何を言うてるかわからへんにもかかわらず、聞いてるだけでなんとなく
浮足立ってきて、ここの品物を買いたいという気持ちがふつふつと湧いてくるのが
とてもおかしい。
たかが墨ではないか。
それは、おばちゃんの想いの為せる技なのであろうか。

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ありがとうございました。