さて、全員無事に杭州のホテルに到着した。さっそく買い物に出る。今回の
旅行は杭州の街が拠点になっている。その理由の一つにこの買い物がある。
杭州というのは昔の南宋の時代の首都だ。日本で言えば多分、平清盛の時代頃
にあたると思う。水滸伝の時代にも近いと思う。要するにモンゴル族に追われ
て北宋から南に逃れて都を移したのだ。国は滅びかけているけど、文化は爛熟
していた。書画も素晴らしい作品が生まれている。今の南画や文人画、水墨画
といわれている絵画の技法と理念のおおもとがこの時代に形成されたと言える
と思う。そやから、ここにある中国美術学院に三ヶ月留学してたとき、この学校
が考える絵画の基本は南宋画にあるとしっかり教え込まれた。
それはええとして、そういう土地柄やから画学生が多い。それで画材に対する
需要がある。そやから画材の店が多い。とこういう図式がなりたって、北京や
上海ではわりと高級そうな専門店しか目に付かない(探せばあるのかもしれんけど)
中で杭州では学生向けの比較的安価な画材が手に入れられるのだ。
それが文体市場と言われるところだ。
この地で学生をやってるときに教えてもらった。実に妖しいところだ。
壊れかけたビルの2階をほぼ画材店のテナントが占めている。
あっちに筆屋さん、こっちに紙屋さん、そっちは絵の具や墨、筆立てや小物の
店もある。同じものを扱う店も多い。
前を通っても特に売り込みはしない。そやから買い物しやすい。
値段はとても安い。日本と比較したらびっくりするほど安いものがある。
北京や上海と比べても安いと思う。
しかし、いいものもあれば悪いものもあるんでそこそこ見分ける眼力も必要か
も知れない。
わしはここに来たら必ず筆と紙を買う。
筆は日本の方が品質は高いと思うけどいいものは値段も格段に高い。しかし、
絵を描く人には消耗品だ。1年も使うと先がちびてくる。そういう事なら、安
いものを思い切り使った方が気持ちがいい。いろいろ使ってみて気に入ったら
沢山買えばいい。ちょっと高級なもんでも1本100元くらいやから、
あんまり気にせんと買える。
1年使ったやつと新しいやつ。
紙は重要だ。画仙紙のいいのは中国で買うしかない。日本で買っても中国から
の輸入品だ。やっぱり本場で買った方が安いし、いいものも多い。しかも、こ
のあたりの店やと専門知識を持った店員が多いから教えて貰いながら買えると
いう利点がある。
こことは違う場所やけど、篆刻の石を安く買える店もある。練習用の安い石を
沢山置いてあるからありがたい。安心して安く買える店は少ないから貴重だ。
今、不思議に思うこと。
篆刻に使う印泥は確かに中国では日本より安いけど、きちんとランク別に品揃
えをしてないようでもあるし、ランクなんか気にしてないようでもある。売る
人にも専門知識がなさそうだ。日本にあるのも中国製やし、いったいどこが管
理してるんやろ? 良い店を見つけたいけど難しい。
墨もようわからん。大量生産されたような普及品的なものか、彫刻なんかに凝
りまくった方向性の違う高級品はよく見るけど、墨としての存在感があって、
そこそこ高いけど買う価値はあるというようなものをあまり見かけない。それ
は本場であるはずの安徽省の墨工場にいってもそうやった。墨の製造技術はも
しかしたら文革以降あまりいいものがないようになってんとちゃうやろか。
硯はいいものがありそうやけど、これは見る目を鍛えて買いにいかないと失敗
すると思う。
いろいろ不思議はあるけど、安くて使えるものを買うのは楽しい。
いつも同じ店に行ってると自然と親しくなるんで、いろいろ教えてもらえるし
騙されることもない。ここへ来るのは旅行の一つの楽しみになってしまったく
らいだ。でも、今回、買ってると名刺を渡された。どうも店が移転するらしい。
そういえばこのボロビルも大分前から改装に入っていて、1階はほぼ新しくなっ
てしまってる。それも服飾店とかレストランみたいなのが入り始めた。段々と
ビル全体のコンセプトが変わっきてるんで大丈夫かいな? と思ってたら案の
定、移転するようだ。新しい場所に画材のテナントビルみたいなのが出来かけ
てるみたい。しかし、店を新しくしたら値段も上がるんやろなあと心配になる。
でも、この地もバブル期のはしっこに入ってるんかもしれん。中国もこれから
どんどん変わっていくんやと思う。
そういう流れは止められへん。
今のうちにちゃっちゃの買っておかんとあかんのだ。
しかし、わしら仲間がほぼ全員一つの店に入って、あれ2本ちょうだい、これ
3本頂戴、こっちはまとめて10本頂戴と口々に、つぎつぎに買い始めたら、ど
こかの国の爆買いとえらい変わらへんなあと言われかねへん勢いになってしま
った。
さて、次回にここに来たら文体市場はなくなってるかもしれんなあ。
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ありがとうございました。