ちゃっちゃと下りましょう
とうとう山頂の塔が見えるところまで来てしまった。日中友好の記念碑がある。
「ちょっとここで写真とってよ」老師は日中友好に関心がある。
「ずっと前に日中友好に尽くしたある人を案内してここに来たんや」
もう時間は眼中にないようだ。「大丈夫ですか?」、ちょうど下で待っている人から
老師に電話が入った。「直ぐ下りるから」と言っている。
「大丈夫、すぐに下りるから、皆待っててくれるよ」
「ここまで来たからあの塔まで行こう」
まだ行くのだ。
山頂は塔を含んだ大きなお寺になっている。ここまでくると参詣する人達でごった
がえしている。
「あそこに登ったら景色がええんやで」山頂を廻る岩の上の道に登って見る。
しかし、安全の為の防護柵があってあまり視界はよくない。
「昔は蘇州の街も、太湖も一望できたんやけどなあ」と老師は残念そうだが、
蘇州の街を遥かに見下ろしていると呉の王様になった気分だ。
中央の門をくぐって、線香の煙がたちのぼる境内に入ると僧坊のようなところもある
大きい寺院であった。右手の方にいくとあの塔が聳えている。
中国らしく、そり屋根の塔だ。
「あっちが王様が来た時食事をする建物で・・・・」
老師はすっかり想い出モードになっている。
又電話だ。
こんどはちょっとあわてて、「わかった。直ぐ下りるから」と言っている。
ちょっとあの門までと言って登り始めてからほぼ1時間は経っている。
案内してくれていた市政府の友人は大事な会議があるから悪いけど先に帰ると
いう電話だったのだ。
「やっぱりなあ」
さすがに帰りは急行モードだ。山道をすたすた休まず降りて行く。
山中に畑があった。寺の僧坊で賄いをするための野菜などを作っているのだろう。
「鶏や鴨も食うんやなあ」
一気に下まで降りてしまった。
皆さん笑って待っている。
「さあ、昼飯を食いに行きましょう」。