次は霊岩山寺へ
この辺を車で走りながらずっと気になっていたのは、山頂に見える塔である。
なだらかな丘の緑が一杯の先の方に丁度好い具合に塔がちょこんと立っている。
「あれも画になるなあ」と思いながら車がそれを見える位置に来るたびに思っていた。
今からそこに行くのだそうだ。駐車場からはかなりありそうだ。
今度は人が多い。有名な寺なんやなあと思いながら歩く。所謂門前町のようになっていて
道端にいろいろな店が出ていて面白い。日本のようにテキヤはいないが、いろんな食べ物屋
がある。お守りみたいな縁起物を売っている店もある。なぜかサトウキビの束もあるから、
これも売っているんだろう。左手の丘の上に見慣れた塔が建っている。
「あそこまで行くんかな?」
ざわざわしたみちをかなり歩くと、左手に山門が見えた。まっすぐ向こうにも何か庭園の
ようなところがある。
「どっちに行くんやろ」と思っていたら、左にまがって、ちょっと上にある2番目の大きな
山門を指さして、
「時間無いから、あそこまで寄ってから帰ろうか」といいながらすたすたと登り始めた。
あわてて付いて行くが、他の人達はついてこない。
「ちょっと行くから待っててね」と話がついているのかもしれない。
門は中国のお寺によくあるように黄色で塗られている。坊さんも歩いているから、当たり前
だが本物のお寺だ。登り下りする人が多い。観光と言うよりは参詣している人達だ。
「あっ、これ美味いんやで」と道端のおばさんから早速何か買っている。
もう門を過ぎてしまっているが止まる気配はなかったのに、何を見つけたんやろ。
何か漬物の一種みたいだ。細い海藻のような草だ。手でつまんで旨そうに食べている。
「食べて見る?」と差し出すので、手を伸ばした。見た目はめかぶのようで、食べて見ると
漬物らしき酸味と若干醗酵しているようで糸引き感があるが痛んでいるわけではない。
「なかなかおいしいですね」酒のあてによさそうだ。
といいながらも老師はどんどん登っていく。
時々立ち止まって、「蘇州の街が一望できるやろ」
「このあたりが、昔の呉越の時代の呉の国やで」、
「あの運河は、越から送り込まれた女にそそのかされて、呉の王様が造ったんや」
だんだん又、目が少年になりつつある。
「時間は大丈夫かいな」。