「出発するぞおーー」と乗務員が大きな声をだしても、村の人はあわてない。
どの駅でもゆっくりやってきて、ゆっくり乗り降りする。
いよいよ、「ボーーー」と鳴らして出ようとするとあわててとびのっている。
まあ、結局は1分1秒違ったらえらい事になるようなもんではないから適当で
いいのだ。
さて、仙人脚駅だろうか、葉子埧駅だったろうか、窓から外を見ていたら、
「グェーー、グァーー」とまるで豚が叫ぶような声が聞こえた。
「何やろ?」と思ったら、豚だった。
2頭ほどの豚を列車に積み込もうとしているのだ。
「これはやばい」と豚は思ったのだろう。必死で抵抗している。
「ここで乗ってしまったら、食われてしまう運命が待っている」と察したの
かもしれない。
悲しそうな、起こっているような吠え声だ。
それでも若者達が何人もかかって強引に列車に積み込んでしまった。
もちろん、人が乗っているあの客車だ。
中で暴れたらどないなんのやろ。
それでも誰も騒がず、ごく自然に列車が発車した。
ガタゴト、ガタゴトとのんびり走って行く。
大きなカーブを曲がりながら、突然、「ブシュッー、シュワーーーーーーーー」
という音がして、蒸気機関車から水蒸気を思い切り発車した。
「かっこええ!」
続けて2、3発!「ブッシューーーー」
多分、鉄っちゃんだったら涙を流して喜ぶのではなかろうかというシーンであった。
必要に迫られれてというよりは予定通りのショウタイムではなかろうか。
ちょうどそれが似合うような見通しのいい景色の場所だった。
もしかしたら、撮り鉄さんたちが向こう側でカメラを構えていたのかもしれない。
さっきの駅で途中下車していた人達も乗り込んできた。
「もしかしたら水蒸気タイムを撮ってたんかなあ?」
田園の中をのんびり、のんびり進んで、再び蜜蜂岩駅まで来た。
ここで又スイッチバックするのだ。
列車を繋ぎ換えしているあいだに、今度は鉄骨廃材みたいなのを客車に積み込み
始めた。
重そうなヤツをどんどん運びこんでいく。
豚はどうなったんやろ?
人はどうなってるんやろ?
何の屈託もなく、列車は出発した。
帰りの車内は疲れて寝ている人も多い。
暑いんやけどねえ。
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