コロナ日和の日々、妄想の旅に出る。V国へ、H市からF市へ列車の旅−33、マジェスティックホテルに泊まろう。

マジェスティックホテルに泊まろう。

さて、H市に戻った。今回は行く時に泊まったのとは別のホテルに泊まる。「マジェスティック」と言う
とても有名なホテルだ。前に泊まって大好きになったホテルではあるが、これには理由がある。
わしの好きな作家、開高健、近藤紘一、沢木耕太郎、グレアム・グリーンなどに出てきて、これは泊まって
みたいと思わせるような佇まいなのだ。
古びてはいるけど高級ホテルなんで安くはない。そうしばしば泊まれるもんではないんで
たまに清水の舞台から飛び降りてみる。
観光客で賑わう銀座通りのようなところを南に向かう。ちょうど川沿いの道路に行き当たった
角にそのホテルがある。

まさにリバーサイドにあるホテルで、部屋からそういう風景を楽しんだと文豪たちの話にも
出てくる。
上海の和平飯店もそうやったけど、こういう古くからあるホテルには独特の空気と
時間が流れてるような気がする。コロニアル風の玄関を入ったら天井の高い広いロビーが
あって、ちょっと中国風というか東洋風な調度品にかこまれてゆったりしたソファに
すわってるとちょっと別人になったような気がしていい気分になれる。
ついいい気分になってロビーの売店にあった、沈香の腕輪と買ってしまった。日本に
持って帰って数珠にするためだ。
ご機嫌よく部屋に戻ろう。
いやその前にもう一つすることがある。
確か、沢木耕太郎の本に、マジェスティックホテルの屋上にあるバーで飲んだ、
「ミス・サイゴン」というカクテルの話がでてきてとても気になる。
これを飲んでみんと気が済まんではないか。勇んで屋上に行ってみる。
そんなんあらへん。
念のために最上階とかも探したけどバーがない。
そういう時代は終わってしまったんやろか。
ただの郷愁を追い求めてもしょうがない。本になったらええ感じでもそれは作家が
体験できたことであって、わしがたとえ同じ「ミス・サイゴン」に出会えたと
してもわしの感性ではただのアルコール、知性の味付けができへんから哀しいものだ。
そういえば、もっと相当前にシンガポールに行ったことがあって、勇んでラッフルズホテルに
行ってみた。メチャ高いんで泊まるのはできへんかったけど、サマセット・モームに
あやかってシンガポール・スリングというカクテルを飲んでみたけど、それはとても
甘くてひんやりして美味しかったけど、だから何やと自分で言ってしまう。
まあ、何にしても話の種にしかならんものだ。
部屋はとても良い。
近代的で清潔で使い易いという風ではないけど、木造中心で古びてはいるけど
使い込まれた感があって、ピカピカとは言い難いけど丁寧に手入れされてる。
隅々まで掃除が行き届いてとまでは言い難いけどわりとちゃんときれいにされて
小汚くは無い。
それで、住み心地はとても良い。
わしは普段あんまりええとこには泊まらへん、予算の関係で泊まられへんので、たまに
泊まるとその豪華さに負けて落ち着かへんのやけど、ここでは、そんなソワソワは
全く起きへんかった。
程よく古びて、ピカピカでないのがやすらぎを誘う。安上がりな性格なのだ。
それでも、ベッドがフカフカ柔らかいと寝付きが悪い。
さて、晩飯は、ホテル内にレストランがないんで、あっても行かへんけど、外に出る。
この街は、海に近いんで海鮮が美味い。
巨大なシャコやら、ソフトシェルのカニなど美味いモンはいくらでもあるけど安いわけではない。
ハマグリや煮魚系の料理をだすところに行ってみよう。
前に何度か行ったことがある商店街の真っ只中にある海鮮系のお店は何だかあたりが
再開発みたいになって様変わりしてしまってた。これはいかんとあちこちうろついて
やっと見つけた同じような店、とても美味しかった。
煮魚はなかったけど大ハマグリの蒸したやつがあった。それにオムレツ風のパリッと
したやつ、あとは野菜を沢山食べた。パクチー一杯、レモングラス、その他香草たくさん。
これがV国の香り、ビールも飲んで大満足であった。
ゆっくり寝るとしよう。

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ありがとうございました。