コロナ日和の日々、妄想の旅に出る。V国へ、H市からF市へ列車の旅−11、車中で日が暮れていく。

車中で日が暮れていく。

さて旅が始まった。しばらくは3人で話をしていた。アメリカの話、この国の話、
わしの語学力では話が次々弾んで膨らんでいくというわけにはいかない。むしろお互いに
一生懸命話題を作ろうとするけどすぼんでいくばかりだ。
だんだんと話題がなくなって、お互いの無口になっていく。
ご夫婦の旦那さんの方は早々と上の寝台にしまった。
奥さんと2人になって話が弾むというわけもなく、わしは窓の外を見る。
南国の田園風景は独特の熱気がある。単調ではあるけど見飽きない。時々、上にいる
旦那さんが暇なのか下におりてきてボソボソと喋っていく、時々気を遣ってか英語で
わしにも話しかけてくれる。
彼らが目指すNというリゾート地はとても美しい海岸なのだそうだ。奥さんが自分の
故郷のことをとても優しい目をしながら話してくれる。いいなあ、いつか行って見たい。
上に登ったきりのビジネスマン風の男は全く降りてこない。
たしかに、このベッドの上段には上り下りがし難い構造になってる。梯子みたいなのは
全くなくて、壁にL字型の小さな金具が付けられれている、それに足をかけて、手と体を
ベッドにあずけてよじ登るようなのだ。めんどくさそう。下にしといてよかった。
ときどき、気がついたらえらい長時間停車してる。30分以上と言う場合がザラにある。
旦那さんが言うには、単線運転やから対向車を待ってるんやけどお互いに遅れるんが
常態化してるらしい。
それに列車の速度はとても早いとは言えない。
昼に出発した列車は、それでも前へ前へとすすんでだんだんと日暮れ近くになってきた。
フランスパンをちょっとかじっただけやから腹が減ってきた。
この人たちは晩ご飯どうすんのやろ?
ガイドブックなんかには食堂車があるし、売店もある、車内販売もあるなんて書いて
あったような気がするけどそんなものは全くなさそうだ。
なんか売りにきたらええなあ、なんて思ってたら、ワゴンを押しておばさんがやってきた。
食いもんを売ると言う気配ではない。給食を配ると言う雰囲気だ。そういえばチケットには
食事が含まれるって教えてもらったような気がする。これがそうなのか。
ご飯の上になにかドロッとしたものをかけて渡してる。
どうしよう? って思ったけど、ちょっとリスキーな気がして躊躇ってるうちに行ってしまった。
1人旅やからもしお腹を壊したら結構大変なことになる。
こんど車内販売みたいなんがきたら考えよう。
向かいのご夫婦はそれを食ってはる。それほど美味しそうでもないんで安心する。
他人の食ってるもんがうまそうやったら妬ましい。
わしの上にいる男はモノを食う気配がない。
結局一晩中来なかった。
わしは、ちびちびとウィスキーを飲みながらチーズを齧る。ときどきパンを食う。
1人旅の緊張からかあんまり腹が減らへん。
日が暮れ初めて急に暗くなってきた。外は海岸の景色が多くなってきてる。

もうじき、向かいの夫婦がおりるNの街が近いのではないか。
確かに穏やかで美しそうな海岸に見える。
20時頃、もう真っ暗だ。彼らが目指す駅に着いた。「さよなら」って別れる。
話し相手をしてもらってありがたかった。彼らの旅が良い旅でありますように!
もう一口ウイスキーをすする。
あんまり寝る気はしない。

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ありがとうございました。