安徽、歙县七里頭で硯作家の工房を訪ねる。
先程の黟县、関麓村からいうと、ここは黄山市屯渓を挟んで反対側=北東側にある。
歙县というからには歙州硯の故郷であるのは間違いない。何となくそういう雰囲気が
漂う一角にやって来た。後でもらった作家の名刺というか、手書きの紙には住所が
黄山市歙县七里頭芸術品市場って書いてあったんで、そういう芸術関係者が集まって
いるところなんかもしれん。
入口は簡単な店舗になっている。入って見ると元気いっぱいの硯作家がいてはる。
しかし、なにやら戸惑い気味だ。日本人がゾロゾロと買い付け業者でもなさそうな
やつらやけど、何しに来たんやろ? 不審顔がありありだ。
それでも奥の部屋をあけると工房になっていて、そこに座って硯談義や石談義を
始めるとだんだんと興に乗ってきたようだ。
だんだんと声が大きくなる。身振りも大きくなる。
どんな石のどこがええんか。どう切り取ったらええんか。なんでこうなるんか。
聞いてても専門的なんでようわからんけど熱気は伝わってくる。
なるほどそうやって造ってるんか?
そういう気持ちがこもってるんか?
聞いてる方もだんだん気持ちが高ぶってくる。
買いたい!
しかし、店舗に沢山ならんでるわけでもない。どうも卸屋さんから注文を受けて
ガリガリ造らはるんとちゃうやろか?
いかにもという道具や石がゴロゴロしてる
あんまり骨董品てきな芸術品狙いでやってはるみたいではないところに共感を
覚える。
それやったら手近に見えるやつを強引に買うてしまわんとしゃあないんやろか?
わしはこの壁に飾ってるやつの左から2番めに狙いをつけた。
何となく小ぶりで華奢で上品な感じが気に入った。いくらぐらいなんやろ?
売りモンかどうかさえわからへん。
聞いてみたら、4000元くらいやと言う。7万円弱か? 歙州硯にしては何て安いんやろ?
それでも値切ってみる。
せっかく日本から来たんやし、ここの硯ものすごく気に入ったし、どうしても欲しいと
おもってるし・・・なんて頑張ってみる。
ちょっとずつ下がってとうとう2000元にしてくれた。
ありがたい。
後で墨と水を借りてちょっと試しに使ってみる。とても良い感じだ。
良く磨れる。今までとは感触が全然違う。これを日本の専門店で買うたらえらい高い
値段になるんやろなあって思う。
うれしいなあ。大事に使おう。
中国での決済について。
なかった人もいた。中国ではよほどの都会でないとクレジットカードが使えない。しかも
両替は銀行がないとできへんし、どこの銀行でもできるとは限らへん。困ったもんだ。
しかし、今はすごい。どんな田舎でも不便なとこでも、大きな店でも小さな店でも
スマホで決済ができるのだ。どうやら個人間のお金の送金ですらできるらしい。
そやから、ガイドさんに建て替えてもらってスマホ決済してもらって、ガイドさんに
日本円で払って後で両替してもらえばええということができてしまった。
ええいもんだ。
むかしは、急に高い買い物をする必要が生じたときなんかカードが使えない場合は
とても困った。中国では、電話線なんかのインフラが遅れてた分、携帯が普及して
あっというまに固定電話なんかのインフラを凌駕してしまった。
こんどは、カード決済なんかのインフラが普及しない分をあっというまに携帯が
飲み込んでしまった。
恐るべしモバイル社会だ。
えらい便利やなあって思う反面、何かとんでもない事が起きそうで心配でも有る。
わしらにはほぼ関係ないやろけど。
硯工芸士の名前は「墨白(王国斌)」墨白は雅号かな?
住所は黄山市歙县七里頭芸術品市場1101号
この人が一番かどうかはわしは知りません。
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ありがとうございました。