紅楼夢の曹雪芹記念館があった
花は十分開いていないが、あまりにも沢山の桃の木の群れがあるのですこし飽きてきた。
どこをどうまわっても似たような景色だ。
人をかきわけ、かきわけと言うほどではないが、歩いていると池の畔まで来た。
要するに公園のほぼ中央に大きな池があるので右からまわっても左からまわっても
自然に池につくのだ。左かぐるっと回って池の向こう側についたということになる。
池のそばを見ていると、実に美しい柳があった。
「これや」と思わず心の中で叫んだ。
いつも水墨画の練習課題にでてくるやつだ。画の中だけの誇張した形かと思っていたが
「ほんまにこんな姿なんや」
そういうかっこいい柳が池のまわりに並んでいる。
「やっぱり書画の国やなあ」
と思いつつ、池の向こう側を歩いていると、曹雪芹記念館という看板が目についた。
「あの紅楼夢の曹雪芹やで」とびっくりした。
紅楼夢というのは、日本の源氏物語に当たるのだろうか、中国の国民的大長編小説だ。
王朝時代の優雅な金持ちの生活が克明に描かれている。
石頭物語りとも言われていて、南京が舞台であるかのような設定だが、モデルは北京
だというし、これを執筆していたのも北京だというから記念館があっても不思議はない。
しかし、こんなところにいきなり現れるとは思わなかった。
入ってみたが、超満員でゆっくり見られない。資料もあまり沢山はないようだ。
本格的な記念館は故郷の瀋陽にあるらしいから、ここは雰囲気を味わうためのところ
なのだろう。
どうせなら、あの紅楼夢の舞台になった屋敷というか大庭園も復元して欲しいものだ。
と、思いつつも、少し焦ってきた。
友人は今日の午後の便に乗って日本に帰らないといけない。
こんなに人が一杯で、そとは大渋滞という状況で帰りのタクシーはつかまるのだろうか。
つかまってもちゃんと帰れるのだろうか。
「そろそろ帰ろう」と出口を目指した。
出口に行く路で、「日本・・・・」と言っているのが聞こえた。
見ると、日本人の彫刻モニュメントがある。
現代作家のようだ。
「こんなとこにも日中友好があるんや」
しかし、急がねば。