万峰林を廻る
「こんな景色ええなあ」と素直に思った。
車は駐車場に着いた。目の前にはネットで落とした写真のような景色が広がっている。
もちろん写真でみるよりも現実の方が遥かに美しい。
ここからは、電気自動車で小高い丘を廻る観光道路を一周するようだ。ガイドがチケットを
買いに行っている。霧で湿ったからだのまわり漂っているかのようだがまだ雨にはならない。
山の姿が遠いものも近いものも時には見えて時には霧の中だ。
背中に籠を背負った人が畑の畔道を歩いている。その先には焼畑の煙が立ち上っている。
馬が2匹首を伸ばして、畑の何かを食べている。その横の方の畑では牛が何かを食べている。
一斉に菜の花を刈り取って、一旦焼いていく作業をしている中で、家畜の豊富な餌ができるの
だろう。あちらでもこちらでも馬や牛が放されている。
「そろそろ行くで」
と電気自動車の運転手から声がかかった。遊園地によくあるような、3人がけ(無理して4人がけ)
のベンチシートを4列ほど並べたカートを3台ほど引っ張って走るやつだ。
「こんなの満員で乗ったら危ないやろなあ」
この車の客は我々だけだ。他にも車は動いているようだが、観光客は非常に少ない。
「渇水で客が来ないのです」ということだ。
のんびり行くのかと思ったら意外と早い。写真を撮っていても気をつけないとカメラを落とし
そうになる。言えば止まってくれるが、黙ってたらどんどん走る。
こういうパノラマ的な景色を見ていると同じようでありながら実際は次々変化していくので
ついついパチパチと何枚も写真をとってしまうが、帰って見て見ると、その変化は頭の中で
起こっていたことなので写真をみてもどうって事がない場合が多いのだ。
それでもやっぱり写真をとってしまう。
「ここでゆっくりして下さい」
絶景ポイントではしっかり駐車するのだ。そしてお土産も売っている。
「水墨画のような景色が・・・」
「水墨画のような景色でしょう・・」
水墨画が盛んに出て来る。
「わかってるがな。帰ったら水墨画に画いてやるから」
と自分にも言い聞かせたが、実際に水墨画に画いてみるとなかなか難しいのだ。