いよいよ万峰林へ
「運転手さん。この景色が見えるところに絶対行きたいんや」
「見るだけやなくて、そこで止まって写真を撮っときたいんや」
ネットで落とした写真を運転手に見せて、一生懸命言っておく。
ちゃんと言っとかないと、絶景ポイントでも車からみただけで、通り過ぎてしまう
事がよくあるのだ。しかも帰ったら画に描くのでしっかりと目に焼き付けておかな
いといけない。
「わかりました。多分大丈夫ですよ」
変な言い方だ。
「ところであれが、昨日飲んだバイヂュウの会社ですよ」
「えらい大きいなあ」
興義の街は小さな地方都市だ。少し走ると直ぐに郊外に出る。
狗料理の看板がやたら目立つ。
「貴州は狗料理が有名ですよ。知ってますか?」
「聞いたことあるけどな」
「食べますか?」
「絶対いらん」調子にのってレストランに行った時に注文されたらかなわん。
「何故食べないんですか?」
「日本では、近所で一杯飼ってるんや。そやから食べもんとは思われへんのや」
食わずぎらいかもしれんし、「狗は旨い」という人も沢山いる。中国人の友人も
「犬は旨い」と言っていた。しかし、私は食べたくないんやからしょうがない。
郊外の景色がだんだん農村の景色に変わって行く。
今日は朝から天気がよくない。今にも降りそうだ。それに少し寒い。
「一応傘持ってきたで」
「あっ、見えた」
特有のお椀を伏せたような低い山がポコポコと並んでいる。
そして延々と続く広大な畑だ。
「これが菜の花の棚田か」しかし、残念ながらもう菜の花は咲いていない。
全部刈り取った後なのだ。次は何を植えるのだろう。入れ替えの為に焼畑をしている。
「これが一面菜の花の黄色だったら、ほんまに綺麗やろなあ」
残念だがしかたがない。
しかし、曇り空が幸いして、山は霧の中に幻想的に佇んでいる。