蘇州古園の旅ー8

天平山の静かな空気
広い庭園の中に池がある。庭園の木々と古びた建物、背後の山がこの池に映りこんでいる。
静謐といえる空気が水面に漂っている。
「画になるやろ」老師が言う。
「子供の頃、半日かけて自転車こいでここまで来て、ずっと写生したり、ぼんやり考え事
したりして一日過ごしてたんや」
目が遠くを見る目になっている。東屋を指さして、
「この椅子になあ、一日座ってたんや」
「青春時代を思い出してるんやろなあ」
これでこの山一面が紅葉したらどれほど美しいだろうと思った。紅葉の季節に又是非来たい
ものだ。
観光地としてはマイナーなところかもしれなくて、観光客は少ない。
声高に説明するガイドもいなくて静かだ。
「池の中のあの橋は、昔は飛び石だけだったんやけどなあ」
安全の為だろうが、こんなにかこってしまうと風情がない。
「馬にのらんかい?」と声がかかる。
自然に飼っているというよりは、観光用に乗馬させるのだろう。
「乗るかい?」と老師は完全に子供になっている。
「いや、やめときますわ」
それより、馬は画の中によく登場するから写真にとっておいて姿かたちを練習するネタに
しないといけない。
「この山の岩が変わっているやろ」
指さす方をみればなるほど、にょきにょきと岩が不自然に突き出している。
「そろそろ行きましょうか」
いいところではあるが、このままだといくらでも時間が経ってしまいそうだ。
「よし、次行こ」。