蘇州古園の旅ー7

蘇州郊外、天平山へ
人でごったがえす出口付近できょろきょろしていると、向こうの方で老師が手を振っている。
「やあ、いらっしゃい」
「友達に案内を頼んどいたから、ちょっとこっちで待っとこう」
「えっ、そんなんええんですか?」
「長いこと会ってへんやつやけどなあ、昨日電話したら引き受けてくれたんや」
「今日は平日やから、仕事あるんちゃうんですか?」
「大丈夫。大丈夫」、「市政府のえらいさんらしいで」
こういう感覚がまだしっくり理解できない。
昔馴染みの友達やから助け合うのがあたりまえという世界みたいなのだ。それはわからん
でもないが、急に、「あした頼むで」と電話されて、それでも機嫌よく助け合えるという
のは中国ならではの感覚ではないだろうか。
私の感覚では、よっぽど親しくないと無理は言えないなあと思うし、いくらなんでも
「今日の明日は勘弁してくれ」と思ってしまう。
こういう世界は助かるけど、ちょっと怖い。
それでも、友人と言う人が車でやってきて、
「宜しくおねがいします」
車の中では、老師とその友人で楽しそうに今日の予定を話し合っている。
車はどうやら蘇州駅から概ね北の方に向かって走っているようだ。
郊外らしき一帯をすぎて小ぢんまりした商店街のようなところについて、ある事務所に
その友人が入って行った。ここでその人の妹さんも合流して一緒に案内してくれると
いうことだそうだ。
どんどん世話にならんひとが増えていく。「大丈夫かいな」
まわりは低い丘陵がつづく。空は晴れて、どこまでも青い。
「ここはとっておきの場所やからな」と老師が言う、天平山に着いた。
大きな庭園がある。山の麓が大きな庭園になっているのだ。
「今日は行くとこ沢山あるし、時間ないから山には登らんと庭園だけにしとこ」
「「范仲淹」って有名な人を祀る庭園やで」と教えてくれる。北宋の時代に活躍した政治家で
文人だそうだ。憂国の政治家として今でも尊敬されているという。
「あれ見てみ」、なるほど「天下の憂いに先んじて憂い、天下の楽しみに後れて楽しむ」
とある。
庭園の中は木が目立つ。「ここは紅葉で有名なとこなんや」
なるほど楓の木が多い。残念ながら紅葉の季節はまだまだ先だ。