前に散歩のコースを変えた話をした。実は又元に戻っている。何故かと言うと、やっぱりこっちの方が 景色に変化が多いし、人も多いのでいろんな事にぶつかっておもろいのだ。 毎日違うようで良く似ているし、良く似ているようで少しずつ違う風景がある。 良く見ていると、体操をしている人たちもダンスをしている人たちも、太極拳をしている人たちも 殆どが同じメンバーで同じ場所でやっているようなのだ。毎日、毎日朝早くから同じところにきて 同じようにイチニーサンシーとやったり、すぐそのとなりで剣をシャッシャと振りつつ体をしゅっと 捻って見栄を切って見せたり、ゆっくりと息を吸い、ゆっくりと息を吐きながら十分に気を集め、それを ゆっくり体の中に溜め込んでいく。 いつもの西湖の朝の光景なのだ。 その途中に湖に囲いを作っているところがある。最初の頃はまだ時期がきていなくて、蓮がちらほらと兆しを みせていた。日がたつに連れて青い蓮の葉がほんの少しずつ増え始めていた。 ここはいつか蓮で一杯になって、蓮の花も咲くんやろなあと思っていたが、毎日同じ景色なのでいつか気持ち から消えていってた。
ある日、なにかのはずみで視線が左に傾いたときに、気がついた。 「えらい蓮が増えたやんか」、蓮が増えても何かが起こるわけではないが、水の上に急に緑が増えてうれしい 気分だ。じっと見ていると、鴨の夫婦が遊んでいる。一羽がもう一羽の首をくわえて水の中に押し込んだ。 いつまでもでてこない。ぐぐっと押さえ込んでいる。ちょっと心配になったが、しばらくするとざばっと音を たてて顔を出した。彼らもこんなふざけ方をするんやな「心配するやんか」。それでカメラを出して、撮って いたら、誰かがやってきて、「おもろいのん撮れたかい」というようなことを話しかけてきた。 とっさにどんな返事をしていいかわからんかったんで、にやっと笑ってごまかした。向こうもにっこり笑って いた。
それから、気にしてよく見ているが、まだ花は咲かない。 囲いの杭に白鷺が止っているときもある。
舟がやってくるときもある。
またある日気がついたが、湖の波も天気の具合によって微妙に表情が違うのだ。 こんな波の日に気がついた。 水墨画に良く出てくる波の形してるやんか。こんなのをさりげなく描ける様になりたいのだ。
むこうから音楽を鳴らしながらおじさんが歩いてくる。 背中のほうで、ひときわ大きな声で、「あー、あー、あー」と叫びながら歩いてくる人がいる。 同じようで少しずつ違う毎日だ。