大楠。
さて、多富気王子跡を過ぎたらすぐに大楠を見た。
樹齢八百年ですか。霊気たっぷりですなあ。ここは神々がおられるところだ。
熊楠がこよなく愛した山の中だ。
だんだんと本格的な杉並木に入って行く。
不思議なことに、雨に濡れなくなってきた。
杉の葉が生い茂ってるんで、雨よけになってるみたい。これはありがたい。
少し歩くと、右手にまた舗装道路が見えてきた。バス停のあるところらしい。
タクシーが停まってるのが見える。
なんでやろ? と思いつつ歩くと、大きなカメラを三脚につけた人が立っていた。
プロのカメラマンやろか?
そういう感じの人だ。なんだか横を通って、カメラの先に出て視界を遮るのは憚られる。
「ええですか?」って言うと、「どうぞ、どうぞ」。
急いで通りすぎんとあかんとはおもうけど、山道やからそうもいかん。
しかもこのあたりは結構雨に濡れる。
気持ちだけは急ぎながら登って行く。
きょうはモデルさんはいてないけど、こんなん撮りはるんやろねえ。
知らんけど。
わしらは先を急ぐ。足は決して急いでないけど。
カメラマンさんは雨のなかにずっと立って、撮影してはる。
ええ根性ですなあ。
進むにつれた、また濡れなくなってきた。
風景は典型的な杉並木と石畳。ええ感じが続く。
時々、道端に何かある。
それが何かをじっくり見てる気持ちの余裕がない。体がしんどいわけではないけど、雨の中で写真をとったり、アクションカメラを動かしたり、いろいろめんどくさいのだ。
しかもちゃんと映らへん。
わしは、熊野古道を隈なく歩いたわけではないけど、小辺路や中辺路、雲取越えなどそこそこ歩いてる。どこも思い出深い、風情のある風景が多いんやけど、ここは中でも一番と言ってもええくらいの感じの良さが漂ってる。
その上、ほぼ一番手軽にアクセスできるのが魅力かもしれん。
ただし、どこでもそうやけど、苦労して歩いたという記憶とともにある景色こそがいつまでも心に残るという場合もあるんで、頑張って歩く労力を惜しまないのも大事なことなのだ。
てなことを言うてる間に、
大門坂が終わってしまった。
簡単。愛想なし的な終わり方。
でも坂道はまだ終わってない。那智大社も青岸渡寺もまだまだ大分上にある。
熊野古道、大門坂、那智大社、那智大滝、補陀洛山寺を巡る旅をYouTube動画にしました。ご覧ください。
-
大門坂の地図。