コロナ日和の日々、妄想の旅に出る。V国へ、H市からF市へ列車の旅−32、フランスパンを運ぶおばちゃん。

フランスパンを運ぶおばちゃん。

さて、とうとうF市からH市へ帰る時がやってきた。これから空港に向かう。
来た時は列車やったけど、帰りは楽をしよう。交通手段がようわからんからタクシーに
乗るけどボラれるんが心配なんでホテルで呼んでもらう。
普通の感覚やと、街で拾ったタクシーは時にはあぶないやつに出くわすこともあるけど
ホテルなんかでわざわざ呼んでもらったやつは安心と思い込んでる。ところが、
何のその、びくびくしながらメーターを見てたら、早い早い、車のスピードも早いけど、
メーターが回るのがとても早い。一呼吸も置かずにズンズン変わっていく。
冗談ではない、どうしよう。
やっぱりあかんかったか。
今更乗り換えるわけに行かへん、今いるとこがどこやら、こんな田舎道でどうしたらええんやら
考えつかへん。料金があんまり法外になってきたら喧嘩を始めよう。
日本語で。
30分強もドキドキするうちにやっとついた。料金を見ると、確かに高いけど、メチャ法外でもない。
腹立つけど、喧嘩するのも大人気ないくらいのちょうどええくらいの値段になってる。
これがやつらのうまいとこなんやろなあ。
面倒くさいから払ってしまう。又、やられた。もう絶対タクシーに乗ったらあかんと決める。
さて、列車の駅と違って大きな空港だ。ひととおり用もないけど見て回ったら待合室に
行って見る。えらい混んでる。座るとこがない。わしは年寄りやから腰が痛い。
できたら座りたい。すきあらばとあちこちに目を配る。飛び立つ飛行機もあるんで
時々人が動く。浅ましくも空きができたら素早く、座らせしていただく。
やれやれ。
向かいに、おっちゃんとおばちゃんのカップル、お金持ちのギンギラギンという程ではないけど
人品卑しからざるカップル。穏やかに会話してはる。
ふと見ると、荷物が? 上の方からフランスパンがはみ出してる。これって荷物全部がそれなんと
ちゃうんやろか? 大きな袋のいっぱい入ってる。20本以上はあるんとちゃうやろか。

もしかしたら、スーツケースにも一杯入ってる?
これって何なんやろ? あんまり美味しいから家族に買って帰る?
有名店のパンということで、近所の人にも頼まれた?
激安店から仕入れて帰る?
いろいろ疑念が渦巻く。聞くわけにもいかんけど、言葉知らんし、恥ずかしい、興味しんしんだ。
そんな美味しい店があるんやったらわしも買って食いたい。
この国のフランスパンって実はかなり美味しいのだ。フランス統治時代があったんで
その時代に定着したんかも知れん。何度か食ったことがあるけど、表面はカリッとしてるけど
中は柔らかくて、全体に軽い食感というものだった。どこで食ってもそうかどうかは
わからんけど、こんなやつで特別美味いんがあるんやったら是非食ってみたいと思われる
ものだ。
1個分けて欲しいともよう言わんし、残念である。
そのうち呼び出しが始まって、飛行機に乗る。
あいかわらず割り込む人が目立つ。
動いてしまえば1時間余りの飛行だ。列車に比べたらえらい簡単に旅が終わる。
H市の空港に着いたらなぜか懐かしい。帰ってきたという感じがするのが不思議だ。
何日か前に見慣れた空気がそうさせるんやろ、そしてやっぱりクソ暑い。
ここから市内までは、バスがあるとわかってる。
あのメータグルグルを見やんですむだけでも心が休まる。
きた時と同じホテルの戻る。
とても疲れた。

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ありがとうございました。