H街に行く前に朝飯を食う。
この国では、わしの乏しい知識ながら、主要都市では空港がとても立派で賑わってるわりには
列車の駅は地味でわりとひっそりしてるような気がする。このD市もそうで、近代的で立派な
空港に比べて駅は日本の地方都市の駅のように扉を潜ったらすぐに外のちいさな広場に出る。
さて迎えの車に乗って出発だ。さっそく、腹が減ってることに気がついた。ガイドさんも
腹が減ってないかと聞いてくれるんでちょうどよかった。
朝早いんで麺、フォーの店くらいしかないと言うんで、ちょうどそれが食いたかったんで
ありがたいと言う。
少し郊外に出て、田舎町の田舎道のなかほど、傾きかけたバラック風というとても良い感じの、
わしの好きな佇まいの、わざとにしてはあまりにも自然な屋台店に着いた。
けっこう有名なお店らしい。フォーという米の麺の専門店だ。早朝でしかも街中で
ないにもかかわらず次々に客が来る。期待できそう。
待ってる間に、笹のような葉っぱに包んだやつが積んであるんで、それを食ってみようとする。
わしにすれば日本で柿の葉寿司や、はや寿司をラーメン食いながらつまむという感覚だ。
ところがちと違う。ねちゃっとしたやわらかいソーセージみたいなやつ、あんまり好みではない。
そのうち麺がやってきた。
なるほど美味しそう。
肉が一杯入ってる。どうやらモツ肉らしい。これがここの名物か。
味は濃い目、野菜もたっぷり入ってる。
もちろん別皿で野菜セットもついてる。これがこの国良いところ。
かなり辛いけど、唐辛子の小皿があるんでもっと辛くすることもできる。これがこの国よいところ。
熱さはぬるめ、前も言うたけど、この国は常に暑い国、そやから、熱々の汁をすするという
気分にはなれんのやろう。わしは暑くても熱々の汁が好きやけど、この人たちには
わしの好みは関係ない。
米の麺は喉越しがよく、つるりと食べやすい。こしはないんでラーメンを食ってるという
ような気分ではないけど、アジアには柔らか麺はどこにでもあるんで、それはそれで
美味しいものだ。
腹がへってるんでズーズーとすすりつつ一気に食う。とても美味しい。
お腹が一杯になった。大満足。
では、これからHという街に行く。
林芙美子の「浮雲」にはこう描かれている。
***
***の町は、三百五六十年前に、沢山の日本人が住んでいた土地である。当時の
御朱印船に乗り、ひんぱんに往来して、日本に、紫檀や。黒檀や、伽羅、肉桂なぞを
送っていたものだが、その後、日本の鎖国の為に、帰国できなくなった日本人が、
この地に同化した様子で、墓碑の表なぞに、太郎兵衛田中之墓などと刻んであるのがあった。
*** 林芙美子 「浮雲」 新潮文庫より。
沢木耕太郎の「V国縦断」のバスの旅のなかではこの墓を見にいくという話が描かれている。
日本人たちの夢の跡、どんなんやろ?
楽しみではないか。
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ありがとうございました。