コロナ日和の日々、妄想の旅に出る。V国へ、H市からF市へ列車の旅−13、D市へ。

D市へ。

さて、まさか夜明け時に峠を越えるだけでこんなに興奮するなんて思ってなかった。
明るくなるにつれてよりはっきり見えてくる景色はとても美しい。このままずっと見ていたい。
時々、峠の下り坂の曲がり方の具合で見え隠れする景色を見ながらそう思ってるうちに、
こんなにゆっくり走ってるはずやのにいつのまにか通り過ぎてしまって、こんどは
川のような風景、もしかしたらラグーンになった入江やったかもしれんけど、の中で
夜明け時の薄明かりの中、舟を浮かべ漁をする人たち、あるいは仕掛けた網を見にいく人たちが
ちらほらと垣間見える。

車内では、係員が来て皆さんを起こし始めた。
わしの上に居たはずのビジネスマンらしき人はいつのまにか下車したと見えて、今は
別の男の人が降りてきた。
「漁樵耕読」というのが古来からの文人の理想的な暮らしの境地なのだそうだ。
すなわち海や川で魚を獲る。山に入って木を切る。田畑を耕す。そう言う暮らしを
しながら読書(学問)をする。
簡単に言えば晴耕雨読ということやろか。わしには出来へんけど絵の題材としてはちょうどいい。
夜がすっかり明けてきた。今のうちにトイレに行ったりして朝の支度を整えておこう。
みなさんが起き出してトイレ競争に巻き込まれたくない。こうしてみると、わしは
ほとんど一晩寝んかったみたい。慣れない異国の一人旅にかなり緊張してる。腹も減っている。
結局晩飯は食えずにパンとウィスキーとチーズで済ませたからだ。
1時間ほどしたら車内が慌ただしくなってきた。
どうやらD市という目的地であるF市の一つ手前の大きな駅に着くらしい。わしも一旦は
ここで降りる。ちょっと寄り道するところがあるのだ。
ここから車で小一時間ほど行ったところに、昔日本人が沢山住んでいたと言うHという古い街がある。
そこに寄って行こうとしている。沢山の人が降りる。ざわざわと騒がしい。
ここD市はV国の内戦時代、南側に加担する米軍の大きな基地があったところだ。
この街には大分前に仕事で来たことがある。ここも海岸に大きなリゾート地があって、
綺麗な海辺もあれば、豪華なホテルもある。そのあたりで仕事の関係のイベントがあって
一泊したことがある。その時にこの国若いITエンジニアたちと飲み会になった。
酒が入って興が乗ってきたら歌になる。昔のわしらの学生時代みたいではないか。
彼らの多くは、面白いことにロシアへの留学経験があるみたい。ロシアに相当な
親近感を持ってはる。同じ共産国でも中国には一線をひいてるみたいだ。やはり
長い歴史の確執が影響してるんかもしれん。そして彼らが歌うのはロシア民謡。
なんだか昭和の歌声喫茶時代を彷彿とさせる。
もう日本ではなくなってしまった風景やなあと懐かしい思いをする一夜になった。
次の朝、海辺を散歩したら海岸に面白いものがあった。お椀型の舟だ。まるで
童謡のそのものだ。人が1人、2人、余裕で乗れるおおきなやつで竹のようなもので
編んだ舟ではあるがしっかりしてる。こういうもので海に漕ぎ出して漁をするのだ
そうだ。
もしかしたら、一寸法師の御伽噺って案外こんなとこにルーツがあるんかもしれんと
思ったりした。
この国と日本とは何かで繋がってるんかもしれん。
ゾロゾロと降りる人たちの後をついて駅舎に入っていく。出口専用の扉がある。
そこを出たら、予約しておいた旅行会社の担当者が待ってくれていた。

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ありがとうございました。