帰る日の朝
さあ、いよいよ今日で旅は終わりだ。ホテルで朝飯を食ってもしょうがないので散歩がてら
表に出た。昨日タクシーで行ったり来たりしてる時、北の方に「永和大王」があったのを
目の端に記憶していたのだ。
朝から快晴だ気持ちが好い。北の方に歩いて大きな通りを渡ると、隆福寺街というのが見えた。
「ここは前にも来た事があるな」、昔は骨董屋とか古書店が軒を連ねる文化的な界隈だった
そうだが、今は唯の安売り雑貨店が集まった場所だ。
更に少し北に行くと、「永和大王」が見えた。豆乳と揚げパンのチェーン店だ。
豆乳と揚げパンの朝飯が中国では私のお気に入りの一つだ。
店の前で、欧米人のおばちゃんが1人きて、入るかどうかためらっている。
結局向こうへ行ってしまった。「何でやろ?」
私も外国人だが、ここが目的で来たのだからためらわずに入った。
先にレジで注文して金を払う仕組みだ。番号を書いた札をくれた。
「席で待ってたらええんかなあ」
しばらく座って待ってたが、なかなか来ない。
「厨房のとこにあるカウンターまで行って、待っとかなあかんのかなあ?」
不安になって厨房のところまで行ったが、相手にしてくれない。
結局、席まで持って来てくれた。
豆乳と目玉焼きと揚げパン。これでいい。
揚げパンは「洋条」と言って、「洋条」といえば「煮ても焼いても食えない厭なやつ」と
いう意味があるそうだが、豆乳に漬けて食うと意外とうまい。
食い終わって、今度はまだ店が開いていない隆福寺街の中を通り抜けて散歩をしていたら
大通りの側に人だかりがしている。
「何やろ?」
「ようわからん」良く見ていると、
「もしかしたら宅急便?」
中国では宅急便はどういう仕掛けかよくわからないし、知人から聞いたこともない。
しかし、宅急便屋さんらしきお兄さんを取り囲んで、小さな荷物を渡したり
受け取ったりしている。
「路上やで」
「本当やろか?」
もっとよく見て確かめたかったが、覗きこんだり、しっかり写真をとったりするのは
かなり不自然なのであきらめた。