万峰湖を廻る
舟が動き出した。
「見晴らしのよい部屋でゆっくり見よう。楽ちん、楽ちん」と思っていたら、
「ありゃあ、反対や」実は走りだしたらこっちは後ろになるんだ。
結局カメラを持って反対側に行く。そこで風に吹かれて立ったまま景色を見る事になって
しまった。
「やっぱり渇水やねんなあ」
水位がかなり下がっている。これでは景色が一変しているのだろう。
確かにこれでも綺麗だが、ここに満々と水があるともっとすごいだろうと思わせるものが
ある。
網を入れて漁をしている舟がいる。
釣りをしている人もいる。
普通の水辺の風景だ。
対岸の岩場をよく見たら、テントが張ってある。キャンプをしているようだ。
「それはええけど水はどないしてんやろ」
「まさか湖の水で炊事をしてる?」
「トイレは?」
人の事を心配しても始まらない。
結構寒くなってきたけど、舟の舳先に立って景色をみていると飽きないものだ。
そういえば、さっき舟の人がきて、昼食の魚を選べという。
水槽に入っているからどれがいいか見て決めろというのだ。
鱸魚というのがうまいという。日本名では何というかわからない。鯰に近いかも知れない
けど鯰ではない。前に四川省の峨眉山で鰱魚というのを食べて、これは実にうまかったと
いう記憶があるけど、これとも違うようだ。
ちょっと小振りのような気がしたので、
「2匹いく?」と聞かれて、つい、「うん」と言ってしまった。
後で友人に、「信じられない」と言われたが、もう遅い。
今回はガイドも魚を食べないと言っているが、「そんなの知るか」だ。
意地でも2匹食ってやろう。
舟は、渇水で先に行けないからなのか、それとも予定通りなのか、途中から引き返して
元の船着き場に戻った。