蘇州古園の旅ー1

ベトナムのホーチミン、フエの旅を終えてしばらくたってから、急に思い立って上海、
蘇州に行った。どうして思い立ったかというと、画の老師がたまたまその時に上海、
蘇州に帰っていて、しかも老師の故郷は蘇州だから画所を案内してもらえるかもしれない
と企んだからだ。丁度旧正月の終わりの頃でつまりは街はお正月の真っ只中という時だから、
いろいろ不便だろうなと思いつつも行きたい気持ちの方が勝ったという次第だ。
上海に向かう飛行機は割と空いている。春節真っ只中にわざわざ行く奴はおらんと
言う事かもしれない。入国審査もがらがらだ。あっと言うまに外に出た。
日本も寒かったが上海も更に寒そうだ。外の向かうに従ってすこしずつ冷えてくる。
いつものようにリニアモーターカーの乗り場に急ぐ。40元にeチケットのプリントアウト
を添えてしっかりと割引を狙う。窓口の女性はにこりともせずにeチケットをちらりと
見て投げて返してくる。
「あいかわらずやなあ」車内に入ってもいつもほど満席ではない。記念写真をとりあう
観光客も少ないし、片時も携帯をはなさないで喋り続けている上海人も少ないようだ。
心なしか横揺れも小さく龍陽の駅に着いてスーツケースをがらがらひきながら
エスカレーターを上がり、地下鉄まで降りて行く。いつもは満員の地下鉄も来た時から
空席がある。
「やっぱり春節や」今日は楽をしていける。
「しまった。ホームを背にして座ってしもた」上海の地下鉄の車内放送はどうやら二通り
あるようだ。駅名がちゃんと聞き取れる場合もあるし、今日は声が小さくて雑音が多くて、
殆ど何を言っているのか分からない。そうなると今どこの駅についたかさっぱりわからない。
中国人も解らない人がいると見えて、時々ホームの表示を覗いているがホームを背中に
してしまったのでどうしようもない。一生懸命駅の数を数えている。
「いくらなんでも人民広場にとまったらわかるやろ」そこから一つ目だから大丈夫。
南京西路で降りると道路までの階段はエスカレーターがないので歩いて上る。構内の店は
殆ど閉まっている。いつもは賑やかな表通りに出てもひっそりとした感じだ。
春節の中国は初めてなので街の様子が気になる。
いきなり冬枯れたプラタナスに電飾だ。夜ははではでしくギラギラしてるんやろなあ。
左に曲がってホテルに向かう。どの店も扉をしめて、ドアの取っ手に鎖を巻いている。
そういういつもの戸締りをしているだけで特別正月らしい飾り付けをしているようではない。
「地味な正月やなあ」とも思うが、殆どの人は実家に帰って本物のお正月をやっている
のだろう。上海は殆どからっぽと言う事だ。
「ご飯食べるの大丈夫かなあ?」
「こんな大都会でそれはないやろ」、「しかしわからんぞ」