杭州お絵かき勉強日記-085 文体市場の筆屋さん

文房関係で一番よく行ったお店は紙屋さんと筆屋さんだ。紙は1枚単位で買えることがわかったので
必要枚数だけちびちび買っていた。同じ水墨画でも何を描くかによって紙の種類が次々と変るからだ。
例えば、山水画などは滲みの美しさが要求されるから生宣紙を使う。山水や花鳥や人物でも少し滲み
を押さえたいし色もきれいにつけたい場合は半生熟宣紙を使う。工筆や人物で、滲みませいない、色
も綺麗につけたいという場合は熟宣紙を使うことになるのだ。
筆も沢山必要だ。山水画の場合は、山や岩を大胆に描く場合も、松の葉や人物の点景を描く場合も、
殆ど一本の筆で済ませていた。しかし、工筆や人物となると、蝶々の髭を描いたり、鳥の羽を描いたり
人の髪の毛を描いたりするのと木の葉や服の皺を描いたりするのとは同じ筆ではとうてい描ききれな
い。
それに、色を塗るのは又別の筆になる。筆を一度に2本持って、1本は絵具を付けて、後1本は水を
つけて絵具をのばすのだ。かちゃかちゃと筆を切り替えながら何度も塗り重ねて行くのだ。
それで又、なんどか筆屋さんに通って、すっかりなじみになってしまった。
ある日、日本から友人達がきて筆を買いたいというからこの筆屋さんに案内した。
「しまった」今日は商売上手のおやじさんが店番をしている。いつもは気のいい息子さんやけど、
うまいことまけてくれるやろか。
「これ、5本、あれ10本。もっと高いのんないの?」
みなさん気前よく次々と買って行く。「久しぶりに、えらい売上やろなあ」と思っていたら、
おやじさんが、私のところにきて、こっそり何本か筆を渡して、「さっさとしまえ」という身振りを
する。
「あいやー、リベートかいな」添乗員にでもなった気分です。
別に欲しくも無いけど、おっちゃんの気分に合わせてもらっておいた。
最後には結局だれかにあげてしまったけど。

ここでの経験によると筆は結局消耗品ということだ。何十枚か画を描くと、先が痛んで鋭い細さが
出なくなる。次々と替えていかないとしょうがないのだ。そういう意味では中国で安い筆を買える
のはありがたい。
2、3本持って来た筆が最後にはこんなになってしまった。

それでも、消耗を意識してないから、じきにちびてしまうだろう。それほど練習すればの話やけど。
その時は又買いに行こう。

文体市場の入り口は工事中という話を前にした。

何度か通っているうちにすっかり綺麗になってしまって、とうとう新しい店がオープンした。
眼鏡屋さんとか女性向けの鞄屋さんとかおしゃれなカフェーができてしまった。

2階はあいかわらずの文房具屋さんの雑居状態。この落差はすごいが、2階の方がずっと居心地が
いい。この下町っぽい雰囲気をなくさないで欲しいものだ。
帰る日が近づいた頃、荷物に割れ物があるので、クッション材を買いに街を歩き回ったことがある。
どこでも見かけるモノやけどいざ買うとなると売ってない。困ったあげく、ここの筆屋の息子さん
に相談したら、売ってるとこは知らんけど、うちにあるのをあげるよと気前よくわけてくれた。
こういう人情がありがたい。

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ありがとうございました。