水墨画を習いに来たのだから、当然、道具がいる。筆とか墨とか硯とかは持ってきた。
紙も少し持ってきた。しかし、筆がいかんと言う。練習、失敗が多いから紙もすぐなくなる。幸い寮のビルの地下に
学用品を売る売店があった。ええもんないとはわかっていたが、間に合わないから買った。しかし、やっぱりモノが
悪い。それで最初の休みが来たので買いに行くことにした。
杭州にも春が来ている。
しかし、日がささないと結構薄ら寒い。
それで、薄いナイロンのヤッケみたいな赤い色のジャンパーを上に羽織って、野球帽をかぶって外にでた。
道を歩いていると、さっそく一人、二人、と声をかけられた。上海のように、日本人とみて怪しい日本語で声をかけて
くるのではない。中国語だ。完全に中国人と思っている。なんかうれしい。
よう考えたら、赤いジャンパーに野球帽というのは中国人の制服みたいなもんやないやろかと思いあたった。歩いて
いてもそんな人がおおいのだ。特に団体旅行客なんかはおそろいの赤いジャンパーを着ていたりする。
それと、道が混み始めた、よく人に当たりそうになる。
よけたほうに人が来る。
それで又考えた。わたしの感覚では、向こうから来た人に右がわをあけてすれちがうのが普通になっている。
どうも中国では、左側をあけた方が自然なようなのだ。それで意識的に左側をあけてすれちがっていくと、わりと
スムースにすれ違える。正面衝突の回数が激減した。これって、車も右左反対やから感覚的に反対なんやろか？
わたしだけ変なんやろか？
文房具は美術学院から歩いて20分ほどのところにある「文化体育市場」というビルにの２階にお店が集まっている。
美術学院のすぐ東のほうにある、南宋時代の老街を模した、商店街を突き抜けた先にあるというのは前に来たときに
教えてもらっていた。
あいかわらず、休日かどうかに関係なくこのあたりは観光名所となので超満員だ。無理にこんな人ごみを歩かなくても空いた道が
ありそうだが、今は知った道を行くしかない。おっと、左にかわさないと人に当たる。
それで「文化体育市場」というビルに着いた。
知ってなければとても着いたとは思えない。ぼろぼろビルでしかも
１階は工事をしている。まさか綺麗にしようとかとても思えないけどなんの工事やろ。階段を上ると確かにフロア全体
が文房四宝関連の店ばかりだ。こんなにあるとどこで何を買うたらえんかわからん。
とりあえず筆屋さんに行こう。
「短くて根元の太いやつない？」、「こんなんどうですか？」、「うーん、もうちょっと太め」
色々親切に出してくれる。「もうちょっとええのないん？」、どちらかと言うと筆の品質は日本の方がいいのではないかと
私は思っている。「これが一番ええですよ」と出てきたのがこれ。
狐の毛と書いてある。普段使うのは狼の毛と書いてるが、鼬の毛の筆だ。これは割りと堅い目で跳ね返りが強いのが好みの
私には丁度言いと思っていた。狐の毛は初めてだ。鼬に比べて、かなりしなやかだ。柔らかそうで粘りがある。
もしかしたら面白いかもしれん。
「いくら？」、「２５０元」、日本ではいい筆は１万円近くする。安いなあと思いつつも、「まけてよ、美術学院の生徒やし」
と強引に言う。「学院の生徒さんやったら２３０元までするよ」、「もうちょいお願い」とうとう２２０元にしてもらった。
そこまでやることもなかったんやけど動き始めたら止まらない。
狐かあ。寝てる間に何かに化けへんやろか。勝手に筆がはしって上手なったりして。
次は紙だ。
「薄くて、滲みのええのんない？」と聞くと、「こんなんどや」と一発で出してきたのは割と感じがいい。
紙の場合は験し描きできへんのが難点や。この人は感がよさそうやからいけてるかもしれん。「いくら？」と聞くと、
４５０元と言う。１００枚入り、一反包みの値段だ。全部使われへんし、持って帰るのは重いし、ええかどうか
分からんし、悩みは多い。
「半分に切ったやつない？」、と聞くと、倉庫にあるからとってくると言う。見せをほったらかしにしてわざわざ
倉庫まで走ってくれた。待ってる間によう考えたら、大きい奴をかくかもしれん。急いで帰ってきたところへ、
「ごめん、このままの大きさでええわ」と謝ってしまった。
それで更に、「５０枚でもええ？」と言ってみた。一包みでセットになってるのはバラすなって日本では考えられない。
それでも、簡単に「いいですよ」と言ってくれた。
更に、「いくら？」と聞くと当然「２２５元」というから、「２２０元にしてよ」とせこく値切ってみた。
「うんざりやな、勝手にせえ」と言う感じでうなずいてくれた。
顧客満足後は非常に高い。しかしまあ、わしもせこいやっちゃなあと思った。
今日の飯はこんな感じ。
カロリーは高そうだが、味はそんなに悪くない。
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ありがとうございました。