「荷物全部預かる言うとるで」、「カメラと財布くらいはええやろ」
セキュリティチェックがえらく厳しい。しかし、それはいいことだ。
イスラム過激派のテロなんかには遭いたくないものだ。さすが世界遺産、ここまで来ると観光客が多い。
薄物を着たインドの人が殆どだ。そらは晴れて、かなり汗ばむほど暑い。
「やっぱりインドやなあ」
遠くにタージマハール廟が見える。
「綺麗やなあ」遠目にもなんという美しい建物なんやろうと思う。
真っ白い、貴婦人みたいな清楚なたたずまいだ。
まわりには何にもない。青い空によく似合っている。
雲もこの景色の装飾だ。
ムガール帝国第5代皇帝、シャー・ジャハーン帝が王妃ムムターズ・マハールの死を悲しみ、その
慰霊の為に建てた墓廟ということなのだ。
墓廟というと、ごく普通には、山の中で穏やかな野山の景色に囲まれて自然に溶け込んだような廟の
ありようを想像してしまうが、タージマハール廟は、まっ平らな平野の中に、真っ白い建物が端坐して
いるのだ。背後に川を背負い、空から鳥瞰しても実に美しいと思う。
正面から見ると、中央に玉葱型のイーワーンと呼ばれるらしいイスラム風ドームがふんわり丸く立っていて、
それを囲むようにさらに小さなドームが配置され、外側にさらに塔が4本立っている。
全てが、優美でシンメトリックに出来ている。
建物の正面から真っ直ぐに水路が伸びていて、美しい建物が映しながら、全体に清潔感を更に与えて
いるようだ。
全体には大きな長方形の庭園で短編の一方が入り口に当たる煉瓦色の建物で一番奥が真っ白い廟だ。
その間に四分庭園と言われる四角く4つに区切られた庭園がある。これが典型的なイスラム風建築なのだ
そうだ。直線と曲線を美しく配した視覚的な美が際立っている。日本や中国でよく見慣れた、思索的、
瞑想的な気分とはちょっと違った美しさだ。
先に進もう。
ドームのある建物まで来た。
「履物を脱げっと言うてるで」
墓廟だから敬意をはらってはだしであがるのだ。
遠くから見ても真っ白い大理石になにやら彫刻を施しているのがわかっていたが、近くまで寄ると
更にすごさがわかる。
この大きな建物の平面すべてにありとあらゆる彫刻や象嵌細工が施されて
いるのだ。まさに無い所が無いほどきめ細かくきっちりと細工されている。
「これはすごいわ」
「あじあの美麗の極みやね」
インドの大理石は手入れしなくてもあまり色が変わらないのだそうだ。
もう400年以上もこのままだったということになる。
普通はこんな繊細な建物は一度戦火があるとすぐに壊されてしまうと思うが、よく残ったものだ。
「すばらしい芸術だ」
「ええものを見さしてもらいました」
振り返ると空の青さともくもくとわき立つ雲と庭園の緑の奥に瀟洒に佇む白い建物がやっぱり
美しい。
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