ホーチミン、ハノイ、サパの旅-23 峠の茶屋

炎にあたりながら、だらだらと喋っていたがええ加減飽きて来た。
「いきましょうか」、そうそうみんなそう思っていたのだ。
来る時は急な坂を一気に下ってきたのだが、かえりはぐるっと残り半分を遠回りして帰る、
周回コースなのだ。滝のある川を右に見ながら川は下って行くが道は登っていくのだ。
長閑な田園風景が続く。もう子供たちも土産物なんかは売らずに、自分たちの遊びを
楽しんでいる。ちょっとした衣服でも民族衣装風の彩色が印象的だ。
地道で歩くだけの道のはずなのに、要所要所にバイクのおじさんが立っていて、
「歩いて帰んのはしんどいやろ、乗ってかんかい?」と誘いをかけてくる。
口でもなんか言うてるが、手を揚げてくるのだ。それにこたえて手を揚げると商談成立の
合図のようだ。
それはホーチミンでもハノイでも同じ考え方のようで、街を歩いていると
さかんにバイクのおじさんが手を揚げて合図をしてくる。
親愛の印で手を挙げているんではないので気をつけた方がいい。
かなり歩いたなと思う頃、峠の向こうに小さな旗がある茶店を見つけた。

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杜牧の詩にあるようなシチュエーションだ。
借問す酒家は何処に有りやと
牧童は遥かに指さす杏花家
酒旗の代わりにベトナム国旗がはためいている。
九官鳥と猿が出迎えてくれた。中国と同じで、ベトナムでも鳥を飼うのが好きな人が多くて
鳥も自慢であれば鳥籠も自慢であるらしい。
お茶目な猿は盛んに我らを挑発してくる。それにこたえると興奮してぐるぐる回るが、回り
すぎると鎖が首を絞めるとわかっていて適当にまわると鎖をほぐしている。
暇つぶしに遊ばれているのは私らだろう。

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もう少し行くと今度は本格的な茶屋があった。
同行の台湾女性達は、ここで一服しようという。
年寄りだけが元気にいさみたってもしょうがない。一緒に茶を飲んだ。ここでも炎がごちそうだ。
それにしても彼女達は良く食べる。
「もうすぐ昼飯やけどなあ」
バイクのおじさん達の揚げる手に、首を横に振って答えながら、急な坂を上っていったら
サパに着いた。
「えっ、日程表に書いてたんとちゃうやん」
事前の日程表ではもう一か所行く事になっている。カットカット村のちょっと先の村だ。
サパからはいろんなトレッキングのコースがあるようで、行き先に合わせて客の組み合わせを
やっているのだろう。それで私の場合はいとも簡単に後の部分がカットされてしまったのかな。
もめて無理に行かせてもこの霧では大した景色も望めないので、後は自分でサパの街を散策
することにしよう。

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