大連駅に向かう街角。
夕闇が少しずつやってくる。日の陰りとともにうそ寒さが増してくる。
人の動きも早くなってきている。
そういう街角で、小さな音が聞こえた。
女がいる。
琵琶を弾いている。
二胡を弾く街頭奏者は珍しくないが、中国琵琶は始めてだ。
思わず、ポケットをまさぐって小銭を取り出す。
銭箱には僅かな銭が入っているだけだ。
顔を上げ、「謝々」と笑う女の顔に物乞いの媚びはない。
美しい人だ。
「写真をとっていい?」と仕草で言うと、
恥らう顔をして、黙ってうつむき、琵琶をボロンと弾いた。
僅かな銭、施しの感覚、ちょっと恥ずかしい。
ちょっと好い一日だった。
行った後、中国流に舌打ちがあったかもしれないけどね。