暮れに画の老師と食事をした時に、「上海蟹を食おう」という話になった。
「ええですなあ」
普通の上海蟹を蒸して食うのだと思っていた。
出て来たのは違うのだ。
生の上海蟹を紹興酒に漬けたやつ?
いやいやそれだけではなさそうだ。酒となんか秘密の物体に漬けこんでいる。
最近は上海蟹はそれほど食いたい食べ物の一つではない。
その事は前にもブログで書いた。蟹はやっぱり日本の蟹がうまいと思うのだ。
あのさっぱりとしながらも味わい深い味、歯触り、食べだしたら誰もが
無口になり、会食の意味をなさないがそれでもうまいものはうまい。
それに比べたら上海蟹は濃厚すぎる味噌だけが目当てになるので
アン胆やフォアグラに似たような感覚で食べてしまう。
だから「もうええ」という気分なのだ。最初、「ええですなあ」と言ったのは
単に言葉がでただけであって、実は本気ではなかった。
ところが、こいつを食べると、たちまち本気になってしまった。
「ほんまにうまいわ」
生で、酒に漬かっているから、あまり濃厚さは表にでてこない。
それよりは、複雑な味の珍味を食べているようだ。
確か、生蟹をキムチ漬けにした食べ物もあって(ケジャンと言うのかな?)
似たような傾向の食べ物で、やはり珍味のうまさがある。
これだと真剣に食べる気がする。腹を食べて、しゃぶって、ちゅうちゅう
啜って、せせって、食べつくしたら、爪も割って、爪の身もちゅうちゅう
吸いだすのだ。
手も口もベタベタだ。
口の奥に、紹興酒的な、秘密のタレ的な、ちょっと甘めの後をひく味が
残っている。
「おいしい。おいしい」
先生ありがとう。
毎週水曜は食べ物に関する話です。
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