最近夢中で読んだ本の話、嵐山光三郎、大江健三郎

  • 2011年1月11日
  • 2人
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嵐山光三郎、「芭蕉紀行」
「芭蕉は紀行文の天才である」ということで、芭蕉の紀行文の跡をたどる旅を
する話だ。
これは滅茶面白い。
芭蕉が訪ねて詩を詠み、文を書いた場所を訪ねて追体験して、ああ、おなじ事を
感動できてよかったねというだけの話ではない。
なぜ其処に行ったのか、その背景はなにか、目的はなにかを探るのだ。
その上で、芭蕉の紀行文というものが、単に感想やそれで想起されたことどもを
単純に名文で綴ったというのではなくて、帰ってから、たくらみをたて、推敲を
かさねて意図的なものを作っていたというのだ。
そういう事であれば、かの紀行文もまた新たな関心を持って読む事ができる。
「なるほど、なるほどそうなんか」と何度も思わせてくれる楽しい本なのだ。
ある紀行文などは、意中の恋人に会いたいばかりに企てた紀行だというのだ。
それも、男の恋人でっせ!

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大江健三郎、「﨟たしアナベル・リイ総毛立ちつ身まかりつ」
大江健三郎は昔はよく読んでいたが、ノーベル賞をもらってから敬遠していた。
別に敬遠するような理由はないのだが、行列のできる有名店には行きたくないと
いうのと同じようなへそ曲がりからきているようだ。
それでもこの本、表紙を見ていると、がぜん読みたくなった。
ピンク地に実に妖しい少女が描かれているではないか。
ポーの幻想の詩、ヨーロッパの中世の一揆の物語り、日本の幕末ころの一揆の
物語り。
それらをつなぐ想念で一つの舞台を創るたくらみが。
老男、老女達のあやしいたくらみ。
知的なエロティシズム。
妖しくも、楽しい。
やっぱり人はすごいわ。

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毎週火曜は最近夢中で読んだ本の話です。

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