安徽の墨

安徽省の黄山には今迄に2回行った事がある。安徽省は文房四宝の土地なので
麓の屯渓の街でそのたびに筆や墨を物色していた。
特に「胡開文」という有名な墨の工場兼店があるので見学をしながら墨を買った
のだった。そう言う話は以前のブログでしていると思う。その時、一番高級とか
いう油煙墨を買ったが、筆はいくらでも水で試し書きをさせてくれるが、墨は
絶対試し磨りをさせてくれない。
日本に帰って、楽しみに磨ってみたら、色が全く出ないのだ。磨り方が悪いのだろう
とゆっくりゆっくりそっとそっと時間をかけて磨って見たが、色がでない。
何遍やってもだめなのであきらめておいていた。
てがしびれるほどやってもだめなのだ。
それで、先日、墨に関するテレビ番組があって、書の話だったが、墨の磨り方で
筆で描いた表現や滲みの違いがでることをいろんな顕微鏡をつかったりしながら
様々な角度で解明していた。その書家は細かく磨ったあと同じ硯で荒く磨って、
混ぜることで気に入った表情をだすということだった。
硯も大事だ。やはり端渓がいいということだ。
その時、細かく磨る場合は、水をほんの数滴たらすだけで練るように磨っていた。
「これかな」と思い、
今は使いやすさで、国産の雄勝の硯を愛用していたが、また端渓をとりだして、
水をほんの2、3滴たらし、練るように練るように丁寧に磨ってみた。
「いける」
すぐに墨の良い香りが立ちあがってきた。
「すばらしい墨やないか」
すこしずつ水を加えながら練るようにすっていくとうまくいくのだ。
ちょっと油断すると粒子が粗くなるので、そっと丁寧にやらないといけない。
まあ、簡単にいえば、墨や硯に無知だっただけなのだ。
今は墨や硯の選び方もきちんと教えてくれる人は少ない。
まして使い方もしかりだ。
安易に見よう見まねでなく、しっかり勉強しないといけないと思った。

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毎週月曜はこだわりのモノの話です。