辛永清、「安閑園の食卓―私の台南物語」
台湾には2度ほど行ったことがあるが、台北ばかりで、南の方には行ったことがない。
しかし、前に台南を舞台にした映画をみたりしたので、台南が気になっていた。
これは、その台南が舞台の本である。
最初はいわゆる美食本かなと思って読んでいた、確かに台南の食事の事が微に入り
細にわたり描かれていて楽しいが、それよりもそれにまつわる台湾の暮らしの話が
はるかに面白い。
日々の暮らしが目の前に立ちあがるには、食事を通してにかぎるというわけだ。
日々の暮らしと食べ物、病気になったら食べるもの、特別な時に食べるもの、
お嫁さんがきたら、
不思議なおやつ、
家長の誕生日の大宴会は?
それに宝石行商のおばちゃん。村の情報源兼情報ばらまき屋兼結婚あっせんおばさん、
ネタやちがうが、日本にも昔はこんな人がいてたなあ。、
いろいろ楽しい。そしてちょっと哀しい。
台南に是非行きたくなった。
萬川饅頭店、絶対行くぞ!
ナム・リー、「ボート」
珍しい、ベトナム作家の本だ。ボートピープル出身と書いてあったので興味を抱いて
読んだ。
短編集だ。
ベトナムを描いた本は沢山よんだ。最初は開高健だった、それから近藤 紘一の本、
沢田教一にまつわる本、おもにベトナム戦争にまつわる話だ。グレアム・グリーン
もすばらしかった。こういうのを読みながら想いをつのらせてベトナムに行ったり
したのだった。
しかし、ベトナム人の本は初めてだ。ボートピープルのボートの暮らしを描いている
ところは随分魅力的だ。
前にホーチミンからフエへの列車に乗ったときに、アメリカから里帰りした夫婦と
乗り合わせた話をした。いろいろ親切に相手をしてくれたが、どことなく深いもの
を持っているような気がした。ボートピープルかどうかはわからないが、何かしら
の辛酸を経て来たような空気がどことなくあったのを思い出した。
他の部分はどうだろう。
毎週火曜は最近夢中で読んだ本の話です。