熊野の皆地笠

熊野古道を紹介するテレビ番組があった。
それを見ていると、すげ傘をかぶった人がでていて、「あんなん欲しなあ」と
思っていたら、その笠の紹介もあった。
皆地笠というそうだ。この地の独特の工芸品で、檜の皮を編んで造るのだそうだ。
檜の薄い皮から造るので軽いのと、檜の油が出て防水にもなるのだそうだ。
長くつかっているとだんだんと味のある色に変色していくと言う。
しかも、この笠を造れるのは今やたった一人になってしまって、その方も90歳を
越えるのでもういつ造れなくなるかもしれないという話だ。
こうなると、「欲しい」
それで電話をしてみると、「道の駅 奥熊野古道ほんぐう」というところに電話
をして下さいという。では、と電話をすると、「今では週に2個出来たらいい方だから
いつ納品できるかわかりませんよ。いつでもいいという条件なら注文受けますよ」
もちろん、いつでもいい。
それで約1カ月待って届いた。
中々使い勝手がいい。便利そう。
さっそくかぶって、友達と飲みにいった。
「おい、それはちょっと浮いてるで」
「いっしょにいたら、かなり引くなあ」
と言われてしまった。面白いとは思うけど、時と場所を心得ないといけない。
どこでも似合うというわけにはいかないようだ。
今度は、画を習いにいったときに京都の街をぶらついてみた。
電車をおりるとすぐに若い女性の声がした。
「あの、その笠どこで買いました?」
「すみません、京都ではなくて、和歌山の熊野なんです」
えへん、やっぱり興味のある人もいるのだ。
この女性にはがっかりさせてしまったが、時と場所を考えて愛用することにしよう。
いつまでもなくなって欲しくない伝統工芸品の一つだ。

毎週月曜はこだわりのモノの話です。

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