このあたりは人通りが少なくてひっそりして、奥まったええ場所だ。わしらもちょっと
お邪魔して横で描かせていただこう。
向こうさんは一生懸命描いてはる。色も付けて本格的だ。わしは、描き始めたもんの
適当にちゃっちゃと描いてもう出来たような気になってきた。わしの悪い癖だ。
いつもじっくりようかかへん。
紅葉を見に行ったり、
カキツバタ? を見に行ったり、
そわそわしだした。
やむなく友人たちもスケッチをやめて、もう帰ろうかと帰り支度を始めた。
いつもながら申し訳ない。
で、帰り道はまっすぐ駅に向かわずに、近鉄線の西側に回って、案内図にあった
「がんこ一徹長屋」というとこに寄ってみたいという友人の意見にみな心惹かれてる。
何があるんかこの図ではわからんけどなんとなく文房四宝の匂いがする。
匂いと感を頼りに線路の向こうへまわるけど道は複雑に曲がってるんでほんまに
行けるんかどうか不安になってきたころやっと見つけた。
長屋と書いたほうには誰もいなくて向かいの「墨の資料館」みたいなのが開いている。
けどあんまり人の気配がない。1階にはあんまり何もおいてないみたいなんで2階に
上がってみる。書の作品なんかが置いてある。墨や硯の展示もしてある。
なぜか開け放しの扉があって、そのむこうで墨作りをして見せている、というか、
さっきまでそうしてたような、後でわかったんやけど、さっきまで中国人の団体が
来てはってこれを見学して帰ったのだそうだ。中国でも同じようなことをする
工房があるんやけど、墨作り全般は文革の影響で良い技術が途絶えてしまったと
言う説もあって日本に来て良墨を沢山買って帰る人が多いと聞いたことがある。
3階に行くと墨の大展示場になっている。わからんからフンフンと見て回る。
すると中から誰か出て来た。
なんとなく話をしてると、いつの間にか墨の話になった。
えらく詳しい。墨の作り方から材料の話、技術の話、何の資料もなくても次々に
微に入り細にわたってとうとうと喋りはる。そのうち、書の墨と水墨画の墨は違うん
やでという話になった。
なんやてと急に聞き耳が立つ。
どうちがうんか聞いてると膠の量がちがうのだそうだ。絵用には膠を少なくして
調整するのだそうだ。それについても蘊蓄も終わることがないほど続く。
ほんなら簡単にいえば、水墨画用って言う墨は買うことができるのかと聞くと、
例えばこれやと出してくる。
それについての講釈もひとしきり聞いてるとどうしても買いたくなる。つい衝動買い
するのがわしの悪い癖だ。
それにしてもええ勉強になった。あんまりとうとうとしゃべりはるんで十分身についた
とは言えんけど、ポイントはわかったような気がする。
墨や硯について、また初心に帰って墨の擦り方から勉強せんとあかんなあと思い直した
次第だ。
それにしても、これでええ絵がかけたら嬉しいんやけどなあ。
技量の問題もあるしなあ。
どんな色がでるか楽しみ楽しみ。
「がんこ一徹長屋」
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ありがとうございました。