奈良バテバテ自転車の旅ー04、法隆寺から帰る

「ここを曲がったらええんや」
友人はきっぱりと言うが、どうも怪しい。しかし、まかせてしまったからにはしょうがない。
やっぱりこのあたりにはありそうにない。
だんだん暑さがこたえてきた。
「あっちへ行こう」と元気よく友が言うが、目の前には大きな坂がある。尻をかばいつつ、
変速機を一杯に下げてとぼとぼと登る。こんな時に電動自転車がうらやましい。
やっと坂を登ったら、コンビニが見えてきた。見えてしまったらもう動く気がしない。
「あそこで休みながら路を確かめよう」
だれも異存はない。冷たいジュースを一気に飲みほした。
「ぜんぜん違うとこまで来てるで」
やっと方向がわかった。「ちょっと先や、もうちょっとや」と自分をだましだまし、我慢
してきたが、さらに厳しい現実を知ってしまった。
路は近くはないが、行き先がわかったので少しは元気がでる。
「やっと着いた」
「見学するか?」
「もうええわ」
どの寺も何度も来ているから、見学すること自体は目的ではない。快適に1300年祭の
奈良路を疾走するはずが、えらい試練になってしまった。
「昼飯を食って元気をだそう」
確かに飯を食ったら元気が出た。
「どやって帰る?」
来たからには帰らないといけない。乗り捨て自転車を借りたのではなかったのだ。
正規の路を来てないから帰りの路もわからない。
「帰りは、ちゃんとした車の路を帰ろう」
もう帰りは迷いたくない。
ところが又もや迷走だ。訊ね訊ねして、やっと正規の路がわかった。危うく反対に走って
いたのだ。
「もう24号線を外れずに帰ろうぜ」と硬く誓いあう。
「24号線が左に曲がってるで」と言う間もなく、友人が一人、まっすぐ突っ走って行く。
「もう気がつくまで待っとこ」
何とか合流して、やっと奈良の街が見えてきた。
余力があれば飛鳥路もと思っていたがとんでも無い。
痛い尻をかばいつつやっと到着だ。「ビールが旨い」

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