「ここを曲がったらええんや」
友人はきっぱりと言うが、どうも怪しい。しかし、まかせてしまったからにはしょうがない。
やっぱりこのあたりにはありそうにない。
だんだん暑さがこたえてきた。
「あっちへ行こう」と元気よく友が言うが、目の前には大きな坂がある。尻をかばいつつ、
変速機を一杯に下げてとぼとぼと登る。こんな時に電動自転車がうらやましい。
やっと坂を登ったら、コンビニが見えてきた。見えてしまったらもう動く気がしない。
「あそこで休みながら路を確かめよう」
だれも異存はない。冷たいジュースを一気に飲みほした。
「ぜんぜん違うとこまで来てるで」
やっと方向がわかった。「ちょっと先や、もうちょっとや」と自分をだましだまし、我慢
してきたが、さらに厳しい現実を知ってしまった。
路は近くはないが、行き先がわかったので少しは元気がでる。
「やっと着いた」
「見学するか?」
「もうええわ」
どの寺も何度も来ているから、見学すること自体は目的ではない。快適に1300年祭の
奈良路を疾走するはずが、えらい試練になってしまった。
「昼飯を食って元気をだそう」
確かに飯を食ったら元気が出た。
「どやって帰る?」
来たからには帰らないといけない。乗り捨て自転車を借りたのではなかったのだ。
正規の路を来てないから帰りの路もわからない。
「帰りは、ちゃんとした車の路を帰ろう」
もう帰りは迷いたくない。
ところが又もや迷走だ。訊ね訊ねして、やっと正規の路がわかった。危うく反対に走って
いたのだ。
「もう24号線を外れずに帰ろうぜ」と硬く誓いあう。
「24号線が左に曲がってるで」と言う間もなく、友人が一人、まっすぐ突っ走って行く。
「もう気がつくまで待っとこ」
何とか合流して、やっと奈良の街が見えてきた。
余力があれば飛鳥路もと思っていたがとんでも無い。
痛い尻をかばいつつやっと到着だ。「ビールが旨い」
奈良バテバテ自転車の旅ー04、法隆寺から帰る
- 2010年9月9日
- 近畿地方
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