正山小种(ラプサンスーチョン)というお茶

知り合いが、中国福建省の武夷山に行くと聞いた。
「これはええ事を聞いた」武夷山はお茶の名産地でもある。ずっと前に行った時は
有名な烏龍茶の「大紅袍岩茶」を買って帰ったが、これは本当においしかった。
未だにちびちびと愛飲している。それで後で分かったのだが、武夷山には他にも有名な
お茶があった。正山小种(ラプサンスーチョン)という紅茶だ。
行った時は知らなかったので探しもしなかった。ラプサンスーチョンという紅茶は、
松の葉で燻した独特の強い香りがある。味も強い。へたっているときはちょっと体に
きついが、おいしい時はやみつきになる味だ。
癖があるもんほどうまいというやつだ。
それで、買ってきてもらうようお願いした。
「ええの、買うてきたで、特別製のやつや」
ありがたい。楽しみにしていたのだ。箱も立派でいかにも特別製だ。
「高かったで」
「申し訳ありません」
立派な箱に小さな袋が10個入っているだけだ。ティパックというのではなくて、一回分を
1袋に入れているようだ。
「えらいもったいぶってるなあ」
慎重にお湯を沸かして、急須も十分温めて、葉がしっかり開くのを待って、おもむろに
一口飲む。
「????」
葉の段階で臭いを嗅いだら、あまり燻した臭いがしないので心配だったが、やっぱり
独特の香りがしない。
「言うて見れば、上等のダージリンやね」
たしかに香りもいいし、味もいい。特製の紅茶ではある。しかし、残念ながら
ラプサンスーチョンとは言えないようだ。
「街中に正山小种の看板があったで」という事だったから、あまりにも有名になって
大衆受けの為に癖のないのも売っているのかもしれない。
もしかしたら、「特製」というやつが癖を抜いたやつのことかもしれない。
何にしても、ごく普通のラプサンスーチョンが欲しかったので、折角買ってきていただいたが
残念な結果となった。
でも、紅茶としての味はいいんですよ。

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毎週金曜は酒や茶に関する話です。