冬の東北、雪見旅-26、バスで盛岡へ

定刻になってバスがきて、粛々と乗り込んで、静かに発車する。ただそれだけ
の事が日本やなあって思わせる。
うれしがりやから一番前の席が空いてたんで窓側に座った。満員になるバスな
んで程なくして若い女性が隣に座った。けど話しかける勇気はない。
バスに乗ったのはわしだけだ。友人達は4時間ほど後の列車で帰るのだ。わしは
仙台から大阪までピーチに乗らんとあかんので先を急ぐ。
バスは街中から郊外に抜けていく。

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しばらく農村を走っていって、いくつかの丘や谷を抜けるとだんだん景色が変
わって行って雪原が見えてきた。雪を見ただけで寒くなってきた。

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山道をぐるぐる回って走るんで酔わへんか心配だ。わしは結構酔い易いのだ。
特に船に弱い。ベトナムのハロン湾で遊覧船に1人で乗ってしんどそうにして
たら船頭さんに遠くを見てろって言われた。それはそれである程度楽になるのだ。
今日もできるだけ遠くを見ていよう。

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一番前やと景色が良い。遠くを見てても飽きない。
2時間弱乗ったところで「道の駅 やまびこ館」についた。

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トイレ休憩だ。山の中の大きな休憩所。バスから降りるとほっとする。

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足下には雪が積もってる。状況が分かってる人は長靴を履いてきてる。休憩所
はここしかないらしく、上りも下りもここに停まるようやから賑やかだ。とこ
ろで、どっちむきを上りって言うたらええんやろ。東京に近づく方を上りって
言うらしいけどほぼ東西に走ってる。そうなると主要都市に向かう方か?
分からん事を考えているうちにバスが出る。
ずっと雪の山里を走る。

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この路線は乗り降りが多い。列車が少ない分、生活の足になっているんやろと
思う。隣の席も何人か人が変わった。
車内は静か。話する人がいても静かにちょっとだけおしゃべりしてる。
例えば、中国やったらどうやろう。静かな瞬間なんて望んでもあり得えへん。
必ず複数の人が携帯電話に向かって叫ぶように電話してる。前や後ろや隣の人
とも大声で喋る。悪気はないけどそうなんや。
窓に日が差してきたらシェードを下げろと言われる。
やかましなあって最初は思ててもいつの間にか元気を貰ってる気分になってる。
他の国でもそうだ。
やっぱりこんなとこでもやかましいくらい元気でないとあかんのかもしれん。
でもわしは静かな方がええかなあ。
暇やからいろいろ考える。
前方に大きな山が見えてきた。

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ここから先はあの大きな山に向かって走ってるようだ。
山はどんどん大きくなる。
段々街中に入ってきた。市中を走るのは時間がかかる。曲がる度に大きな山が
ゆっくり方向を変えて見たり隠れたりする。
山を見ながら盛岡駅に着いた。

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山は岩木山と言うのだ。

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ありがとうございました。