いよいよカンボジア最終日だ。帰りの便は午後やから午前中は自由なんで折角
やからどっかに行っときたい。近くにトンレサップ湖という大きな人造の湖が
あって、そこに行けば水上生活者の暮らしが見れるというのを聞いていた。
どやったら行けるか調べてみよう。
フロントで聞いて見ると、半日ツアーのようなものがあって1人15ドル位で参加
できるそうだ。しかし、朝早い出発で午後1時頃の帰還みたい。午後1時過ぎに
は出発したいと思てるんでちとぎりぎりかなあ。朝早くにチェックアウトして
しまうんも面倒やし。車を手配すると幾らくらいと聞くと20ドルと言う。
現地で舟に乗るのに又1日20ドル。これはどの方法で行っても必要だ。雨季やし
いつ大雨が降るかわからへん。後の方法で行ったほうが無難そうだ。
さてそれではいよいよトンレサップ湖の水上生活を見にいくのだ。
そこで、ちょっとしたトラブルを経験するのと、奇しくも義経八艘飛びみたいな
大技も見ることができた半日の始まりだ。
ホテルの周辺でも川はあってそのヘリで暮らしている人は多いけど、それを水上
生活とは言わない。大体一時間くらい走ると本物らしい雰囲気がしてきた。
やがて船着場へ。
チケット売り場に行って、チケットを買うと、グループ毎にわけられて、どの
舟に乗れと指示される。これが曲者やったというのは後でわかった。
わしと友人は二人なんで当然どっかのグループと相乗りになるんやろと思てたら
二人だけ別の舟に乗せられた。
運転手の少年とガイドの少年とわしらだけや。
ガイドの少年は立て板に水、えらい流暢に英語を喋る。わしらなんかの比では
ない。圧倒されそうや。まだ見た目中学生くらいの感じやのにもう一人前に働
いてるやんか。
舟はトンレサップ湖と船着場の葦が密生した運河を走る。
どうも水上生活の村ってトンレサップ湖の中ではなくてこの葦の茂る運河の中
にあるようだ。
お兄さん達、釣れまっか?
時々いろんな舟と行き交う。長閑なもんや。
とゆったり、まったりしようとしてたら、どこからか1艘の舟がやってきて横付け
した。何やろ? と思た次ぎの瞬間。どさっと音がして、子供が飛び移って来た。
一瞬の早業だ。しかも両手に缶ジュースがびっしり入ったダンボールの箱を抱
えたままだ。
えらいことしよんなあ。と驚くやら感心するやらしてるとこれを買えという。
とっさの事にどう対応してええかわからん。ビールでもあったらとおもうけど
コーラみたいな炭酸系のジュースばっかりやった。
「悪いけど要らんわ」って言うと、「ちっ」と言う感じで去っていった。
くるのもすばやいけど帰るのも素早い。
よう考えたら、あの手練の技に免じてなんか買てやったらよかったなと思った。
しかしあっと言うまに消えてもたからしょうがない。
舟は先に進む。しかし段々水草の密生した中を水草に乗り上げるようなとこに
入り始めた。あきらかにわしらだけコースが違うんとちゃうやろか。
だんだん不安になってくる。前も後ろも、右も左も水草だらけや。
どないなんね。とおもうころ、やつらは舟を止めた。
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