ホーチミン、フエの旅ー28

フォン川クルーズ
フォン川クルーズは結構楽しみにしていた。1日観光でこのコースを選んだのも、
フォン川のクルーズがついていたからだ。案内書では夕方にクルーズすることになっていて
運がよければ綺麗な夕陽が見れると書いてあった。
「私は運が良いからきっと夕陽が見れるだろう」と実は期待していた。しかし、こんな
真昼間に夕陽が見れるわけがない。適当にコース変更されてしまったようだ。
川岸から舟に乗り移ると、十数人は乗れそうな結構大きな舟だが、勿論客は私とガイド
だけだ。
「どこでもいいから腰かけろ」というので、川を遡るのだから史跡のある旧市街が見れる
右舷側に座った。固定席ではなくて、小さな椅子がいくつかあって、それをどこに置くか
というだけの事だ。
「さあ見るぞ」といっても見えるのは川景色ばかりだ。
それもいい。舟からみる景色は列車や車と又違ったものがある。
視点が低い。川面は道路より下にあるので、どの風景もしたから見上げることになる。
それに家があるわけではないし、道が混んでいるわけでもないので視界が広い。
ゆっくり動くので視界が変化しないようでもあるが、微妙に移り変わっていくのが
実は見厭きない。フエ市街はフォン川の河口になるので、川幅はかなり広い。
100メートルは余裕で越えている。乗ったのは旧市街の一番東側、川下側だから、
新市街と旧市街を結ぶ3本の橋をつぎつぎに通って行く事になる。
水面はあくまでも穏やかで、時々、水上生活者の舟や観光船とすれ違うだけだ。
「近くばっかり見てると酔うてしまうわ」と思い、できるだけ遠くの景色を見ようと
する。運転して居るのはおっちゃんで、おばちゃんがモノを売りに近づいてきた。
「家族でこの舟を動かしてるんです」とガイドが説明する。
「生活しながら観光船をやってるんか?」、子供も後ろの方にいるようだ。
おばちゃんがしきりにモノを勧めてくる。殆どが画だ。
「いかにもベトナム」という感じをだそうとした画。アオザイ、すげ傘、芭蕉の木、
川に舟、お寺の塔、等々。
「こんなん俺が描いた方がましやん」と思いつつも、笑って手を横にふる。
これが駄目なら、こっちはどうだと次のをみせる。又、つぎのを出してくる。
「ちょっと待ってくれ。これやったら景色見られへん」とあわてて景色に目をやり
写真をとる。哀しそうな顔をしてるので、気の毒になって又見る。
又、首を横に振る。他のを持ってくる。その間に必死で景色を見る。
「クルーズでちょっともゆっくりできへん」
ああ、もう着いてしもた。