「わっ、赤が氾濫してる」
民族衣装の赤い織物が右からも、左からも、向こうからも、後ろからも押し寄せてくる。
私をめがけてくるはずはないので、横をすりぬけていく。
用があるのは、「これ買わないか?」と言う人だ。
店からもここぞとばかりに声がかかる。
市場の入り口付近は土産物屋ばかりだ。
そこを切り抜けていくと、中はほんまもんの市場だ。とうがらし、キャベツに、にんにく、
じゃがいも、玉葱、ピーナッツにみかんに米、肉に魚、ありとあらゆるものがある。
果物は果物コーナーみたいに何となく固まっていそうでもあるが、そうでもない。
近くの人達が、週に一回ここに集まって、必要そうなものを売りに来て、必要なものを
買っていくのだ。もともとは物々交換の場であったのだろう。
今はお金かな。
足元は結構悪い。ぬかるんでずくずくの所もある。
子供達は一生懸命だ。遊んでいる子もいるし、何か買おうと懸命の子もいる。店番している
子もいる。かわいいなあ。
丁度昼時なので、食事コーナーみたいなところに家族が集まってきている。
簡単な料理を頼めるようだ。弁当をもってきている風ではない。
「こんなとこでちょっと食べたらうまいやろなあ」ちらりを頭をかすめる。
冒険することのためらいはないが、もし、水が、汲みおきやったらやばいしなあと
あきらめる。
確かに、この村の生活と豊穣と人と子供と、赤と紺の衣服の氾濫を見ているのは楽しいが、
モノを買うのでなければ時間はわりと早くすぎる。
土産物も服に負けずに綺麗な織物で作られている。
鞄があるし、小物入れがある。暖簾のようなものがあるし、敷物もある。一杯ある。
しかし欲しい物がない。
こんな素朴な素材があって、作る人がいて、どんどん物ができているということと
こんなに観光客がきているのにモノが殆ど売れていないという事のアンバランスが
悲しい気持ちになる。
買わないやつはけちなやつ、おろかなやつ、心のせまいやつというのではなくて、
どんなに一生懸命けなげに作っても、売れるモノをデザインできないとどうしようもないと
いう現実だ。
そういうリサーチに誰か援助や投資をしてあげたらいいのになあ。
下らない事を考えているうちに隈なく見てしまったような気もする。
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