舟に乗ろう
ビールも飲んだし、お腹も一杯になってすっかり良い気分だ。外にでると、今日は
日曜日のはずだが、あまり人が歩いていない。観光といっても閑散期なのだろう。
ガイドと二人で新市街のの中をゆっくり歩いていく。雨はもうやんでしまったが、
ホーチミンと違って少し肌寒いのがほろ酔いには心地いい位だ。しかし、昨日の
朝までTシャツと短パンだったのにえらい違いだ。
「これからどうするの?」と聞くと、刺繍工場を見学してから舟に乗ってフォン川
をクルーズすると言う。
5分も歩くと、もう刺繍工場についた。川べりにある立派な建物だ。
どう見ても工場というよりは、店だ。門を入ると綺麗な庭があり、池まで設えてある。
その池を廻って展示館があって、展示即売をしているのだ。
確かに、刺繍作業場の棟もあって、そこでは実際に作業をしている。
しかし?
「これって、普通の店が営業でやっていることやん」
確かに、横で何か説明してくれてるけど、この旅行社がこの店と特別何かの契約を
してるわけではなさそうだ。
「私を連れて立ち寄っただけ」だ。
「こういう観光コースの造り方もあるんやなあ」
「「刺繍店に買い物に連れて行く」って言やええのに」
刺繍の内容や値段を聞くと、店の人が英語で答えてくれる。ガイドは英語を話せない。
「あの人は何ですか?」と店の人が聞いてくる。
「変な観光案内やね!」
変な契約があって、うるさく買い物を勧められないので却ってよかったのは間違いない。
店をでるとすぐ川沿いに舟が一杯ならんでいる。どの舟からも声がかかる。
ある舟を選んで、「これに乗ろう」と言う。
前から契約してあったとは思えない。これもその場で選んだんやろうなあ。
面白い旅行社だ。