ある日地下鉄の駅看板を見ていたら、「老松町骨董祭」というのが貼ってあった。
そう言えば何年か前に行ったことがある。その時には、李朝時代の物だと言う朝鮮渡来のメガネケースと
メガネのセットを買ったことがある。紙のこよりを編んで漆で固めたというユニークなもので面白いので
自分なりにレンズを入れ替えたり紐をつけたりして愛用している。
そんな事を思い出して、「今年も行ってみよう」とでかけたのだった。
いきなりえらい雨だ。それでも行くと決めたからには行かなしゃあない。しゃあないことはないが雨ふり
ごときでやめるのもけったくそがわるい。
「先に飯を食って元気をつけよう」と車で走った。雨の中、探して行った店が閉まっている。それならば
とその近くの店に行ったら又、閉まってる。「難儀やなあ」と三軒目に行ったら、土日は営業してません
と、焦れば焦るほど深みにはまってしまった。老松町まで行ってしまえば、レストランと駐車場があるか
どうか分からん。「ちょっと遠いけどしゃんないわ」といつも東洋陶磁美術館に行く時の駐車場に停めて
ついでに、志津可で鰻を食ってしまった。この話は又別途するとして、老松町へ急ごう。
雨がますます強くなってきた。店先に並べた皿や茶碗に雨がかかっているがどうしようもない。
老松町というのは御堂筋の堂島川を渡った東側に川と平行に並んだ骨董屋街だ。勿論普段から骨董屋さんと
して営業しているが、骨董祭の時は店をオープンにして、表に買い易いものを並べたりして、入り易いし
買い易い。一見さんのわしらでもあまり気がねしないで入れるからいいのだ。
「すごいなあ、備前やんか。藤原啓やで、加藤唐九郎はやっぱりええなあ。濱田庄司もすごいで」
いきなりすごい名品ばかりの店に入ってしまった。買えるわけもないが、眼の保養にはいい。今年は、
例年行っていた有田の陶器市も行かなかったのでここで眼の保養をしよう。
それにしても今の不景気を反映して若干値段がさがっているのではないかという気がした。それでも
買えるわけはないけど。
眼の保養には西洋アンティークを見るのも楽しい。そういう店も沢山あるのだ。
あるお店で話を聞くと、最近は中国人のお客さんが圧倒的に多いのだそうだ。今は震災でぱったり止まって
いるが、そろそろ又来始めているという。
それで、店に来るとまず中国の骨董はどれかということで、値切りはするがあまり確かめもせずにがばっと
買っていくそうな。一つには日本人は騙さないという信用があるということと、中国に持って帰れば今は
バブルの真っ最中だから恐ろしいほど高価に売れるという投機目的なのだそうだ。
「ものはお金のある方にながれる」と笑っていた。最近こういう類の話を良く耳にする。
昔、日本がバブルの頃、ヨーロッパのブランド店に行った日本人観光客が手当たり次第に買い漁って
顰蹙を浴びていたような事を今お隣の国もやり始めているのかもしれない。
いいことならいいけど良くないことも同じ道を歩んでいるのであれば残念なことだ。
確かに中国では骨董品だけでなくて贋物が非常に多い。騙されてがっかりすることが多くある。日本でも
贋物や騙す人がいないわけではないが、それよりも信用できる商売をする人の方が圧倒的に多いのは
有難い事だ。こういう文化を大事にしないといけないと思う。
わしらの買い物もしよう。
安いモノや。
「これええなあ」、「唐津ですよ」
「傷入ってるけど、金継してるんやね」、「金継で結構お金かけてますよ」
「なんぼ?」、「3000円にしときますわ。
「2000円にしてよ」、「・・・・・・?、しゃあないなあ、まけときますわ」
それで買ったのがこの茶わんだ。
形がいい。継目も味になっている。軽くて手にしっくりなじむ。お茶も非常に点てやすいという。
味もいい。(気のせい)
骨董の名品とは言えないが、使い易くてなかなか気に行った。
いいものを買った。
明日から、「北京の春」を連載します。宜しくご覧下さい。
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