石の曼陀羅、アンコールワットの想い出-2.アンコールワット廟

ぷるぷるぶーぶーと適当にゆっくりツクツクは走って行く。シュムリアップはやたら緑が多い。
深い森だらけだ。道は殆どが地道だ。雨期が終わったあとなので雨の心配はいらない。日差しはあるが
Tシャツだとそれほど暑いわけではない。
小一時間ほど走ると通行門に来た。ここから先が有料なのだ。一日券か三日券か選べと言う。
今日と明日やから二日券はないのかというと無いという。一日券2回と三日券が同じ値段のようだから
便利な三日券にした。40ドルだ。写真をとってパスを作ってもらうのに結構時間がかかった。
「あじあ時間やね」
また、とことこぶーぶー、先に進む。
川辺の村を通って森を抜けて、掘割のようなモノが見えてきた。遠くに石の尖塔が見えている。
「あれがアンコールワットかな?」
だんだんはっきりしてきた。堀に囲まれた巨大な石の神殿だ。西門の入り口のところでツクツクを降りる。
「ここで待ってますから」、大丈夫かいなと思うが、金を払ってないから絶対待っているだろう。
幅数メートルはある巨大な橋が正面入り口の通路になっていて、乾いた太陽の下で観光に来た若者たちの
エネルギーがこぼれおちそうなほどだ。

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橋の真ん中あたりが特別沸き立ってきたので何事かと覗きに行くと、結婚衣装らしい白いドレスの綺麗な
娘さん達を囲んで皆写真をとっているのだ。
「ええやんか」
「きれいやなあ」
なんぎなおっさんになりきってしまって、その中に紛れ込んで一緒に写真も撮らされて頂いた。
「ごちそうさま」元気も一緒に頂きました。

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巨大な石壁に囲まれた門を入ると、大きくて美しい神殿が見える。
中央に一番大きな三角塔があって4隅にも少し小さな三角塔を配した本殿があり、その外周の回廊の4隅
にも三角塔がある。塔だらけの建物だ。これを空中から見ると巨大な曼陀羅の模様になっているという。
すると其々の塔は神の国で瞑想にふけるための山々なのかもしれない。
太陽の下では、どうみても只の廃墟ではあるが、日が落ちるとこの神殿のシルエットが薄暗がりのなか
で壮絶な美しさを見せるに違いないと思わせるものがある。

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実はこの神殿は真西を向いているのだ。西を向いた神殿というのは珍しいと思う。日本でも中国でも
大抵の宮殿や神殿は南を向いている。神様や王様は南を向いて左から太陽が昇り右に沈むその全ての
国土を支配しているという形をつくっているのだと思っていた。ここでは太陽は背中から出て正面に
沈む。ヴィシュヌ神というのは太陽の神だそうだから己自身が太陽ということでそうなっているのか
もしれない。春分と秋分の日には、この本殿の真後ろから太陽が昇るということなのだ。
真っ赤な大きな太陽を背景に真っ黒な神殿のシルエットがこの世のものとは思えない美しさを見せる
のだそうだ。残念ながらこの時は12月、こういう景色は望めなかったのだ。
それで画に描いてみた。

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本殿の前にある西の回廊に入る。
長大な回廊一面に素晴らしい浮彫の彫刻が施してある。
これも後で知ったが、ヒンズー教に伝わるラーマーヤナという天地創造を描いた壮大な叙事詩を画に
したものだそうだ。

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表が西だから、裏に回ると東の回廊ということになる。
ここには戦いの叙事詩マハバーラタというのが描かれているそうだ。

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説明を聞きながら時間をかけて見ないと意味がわからない。我らはガイドをやとっていないので己の
眼でひたすら見て回るだけだ。

ヒンズー教の支配のあと、仏教徒がここを支配したので仏教色もまざっているという。
「わしにはわからん」

ここへ来たらこの急な階段を上るのだそうだ。
「あぶなそうやなあ」
危険そうなわりにはそれほど意味があるとは思えない。上へ行けるとなると誰でも行きたいものだ。
上に登って瞑想する境地でもないからパスすることにした。
今では、柵と手すりができてそこだけ登り降りができるようになっているそうだ。順番待ちがひどい
に違いない。

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あまりの大きさに疲れてきたから一旦出て、次行こう。

ところであの、空にふわりと浮いているバルーンが気になるなあ。

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