広田不孤斎、「骨董裏おもて」
先日、東洋陶磁美術館に行ったときに売っていたので買ったものです。
大部の随筆集ですが、面白くて一気に読んでしまいました。
丁稚奉公から始まった骨董屋人生で見てきたもの、考えた事、それによって培われた人生観、形成された人生全てが伝わってきます。
骨董品売買の世界で、ぼろもうけとか掘り出し物とかいうことはあるにはあるにしても、決してそれが基本にあるのではなくて、あくまでも物の真贋を見極めて、それに適切な価格をつけるという総体的なはなしがあって、その上で出てきた結果として値段があるのだという事がなんとなくよくわかりました。
真贋の見極めというのは、素人でもできるようになりたい魅惑の世界ですけど、落とし穴が一杯のようですね。
どんなビジネスにも共通の、顧客満足があってこそのビジネスという考え方以外にも、骨董の世界では、品物を売買を通してしかるべきところに収めて、後世に残すというのが使命でもあり、大きな喜びでもあるというのは、全くその通りだろうなと思いました。
名品を身近で商いながら一生を過ごすのは、なかなかうらやましい人生です。
人生のかなりの部分をささげた中国美術品の買い入れの話の中で、戦前の中国の話が沢山でてきます。
北京もこの話の頃とは随分変わってしまっています。
そういう思いで読んでいくと、又、中国に行きたくなってしまいました。
陶磁器への新たな関心も生まれました。
いいものを見る旅をもう少し続けたいと思っています。
毎週火曜は最近夢中で読んだ本の話です。