マリオ・バルガス=リョサ、「アンデスのリトゥーマ」
こないだビザの写真を撮りに行った。6月の初めの頃にインドに旅行に行こう
と思っているがインドに入国するにはビザがいるのだ。今は時間がいくらでも
あるんで自分で手続きしようと思ったらネットで入力してそのアウトプットを
持って領事館に行けばいいと言うことがわかった。それなら楽なもんだ。その
時写真も必要だがこの仕様がけっこううるさい。大きさだけでなくて、顔の位
置や被り物やらいろんなことにたいして要求がある。なるほど髭やらターバン
やらいろいろんな人が多いからなんやろなあと感心した。それで用があって梅
田に行って今はやりのグランフロント大阪ができたらちょうど裏通りになりそ
うなあたりを歩いてたら妖しげな写真屋さんがあったので寄ってみた。
えらい元気なおばちゃんがいてた。写真の仕様を見せたら、「まかしてとけ、
わたしは名人やからこんなもん何でもないわ」とえらい勢いだ。つい勢いに呑
みこまれて撮ってもらうことにした。それからもそのおばちゃん喋る、喋る。
結構テレビの取材もある、何でかわからんけど人気の店なんやそや。
それで話は旅行の話になって、ペルーのマチュピチュに行ったんやで・・そん
時はなあ・・・と幾らでも話は盛り上がっていく。
えらい長いこと引っ張ったけど、この本、アンデスの山の中の話だ。
ちょうどこの本を読んでる最中やったんでおばちゃんの話がおもろかったと言
うだけのこと。
この本はそうとう異質な本だ。しかもぐんぐん惹き付けられる魅力がある。
政府の下っ端警察の伍長リトゥーマと、その助手トマスの目の前で3人が男が
消える。それからつぎつぎと行方不明者が発生していく。リトゥーマとトマス
はアンデスの山の中を村から村へと犯人を捜してさまよっている。アンデスの
山中には革命軍も潜んでいるのだ。もしかしたら革命軍に連れて行かれた?
しかしアンデスには人の生き血を抜いて生贄として精霊にささげるという風習
がインカの昔からあるのだ。村にはそういう呪術師が村人にまじって暮らして
居ると言う。それどころか魔女も居る。其の上、トマスが政府軍の隊長が女に
乱暴してると勘違いして撃ち殺してしまったのだ。
正義って何? モラルって何? 価値観が全く違う世界やんか。
死生感も違う。
アンデスの高みの中を二人は行方不明者を追う。
精霊のはびこる山の中を。魔女や生贄が不思議でも何でもない山の中を・・
誰が殺した? 生贄になった? どこかに消えた?
いやあ実に面白い。
アン・タイラー、「アクシデンタル・ツーリスト」
この本、前にブログに書いたジョン・アップダイクの書評にあったやつだ。
これも実のおもしろい。アン・タイラーってすばらしいストーリーテラーだと
思う。旅行が好きでも何でもなくて、でも仕事かなんかでしかたなく旅に出る
ないといけなくなった人が、できるだけ普段の暮らしと違和感なく過ごすには
どうすればいいという旅の本を書いてみようと言う人がいた。
なかなかおもろいやないか。
そういう人がこの話の主人公だ。しかもこの男なんだかダメ男のようなのだ。
子どもを殺されてからますますダメになっていって、とうとう奥さんにも逃げ
られる。一緒にくらす犬もダメ犬なのだ。
その両方のダメ具合が実に生き生きと描かれて思いいれがどんどん強くなる。
そして男の再生装置を備えた女が現れる。
犬の再生を通して男も再生されていく。
しかし男はそれを理解してるのだろうか?
おっと又、夫婦が元の鞘に収まるのか?
気がついたらダメ男が4人になっているのか?
更に一人増えるのか?
この本、しかも旅行記でもある。すごいね。
映画になるはずやね。
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ありがとうございました。