昨年末、ついでがあって京都四条の川のそばを歩いていた。
どうも遥か昔、見た事のある喫茶店が目についた。それで時間もあったし、寒くて
トイレにも行きたかったので中に入って見た。
「フランソワ」という喫茶店だ。
田舎から出てきて九州の学校に行っていた頃の事だ。ちょっと変わった友人がいた。
口がうまくて女たらしで鼻もちならないようなやつだったが、どこか人懐こくて
やさしいところもあるヤツで、デカダンスな匂いのする奴だった。
ある時、余り付き合いはないはずなのに何を思ったのか、京都のそいつの実家に
遊びに行く事になった。なんと、もっと破滅的でけったいなやつも一緒だった。
京都の東、哲学の道を北にずっと上がって、銀閣寺も通り抜け、白川通りを
更に東に回ってかなり歩いたところにあったと思う。
「京都って疏水が家の側を流れていていいな」と思った記憶がある。
その時に、初めてこの店に連れて行った貰った。
「お前らはいなかもんやから、こんなしゃれた店には来た事ないやろ」と言う感じだ。
店内は当時も変わらないバロック様式の落ち着いた内装で、静かにクラシック音楽が
流れていた。
当時はジャズが流行っていて、京都には前衛的で先鋭的なジャズ喫茶が沢山あった。
店に入ると轟音が鳴り響いて話もできない。煙草の煙がもうもうだ。そんな中で
何時間もぼーっとしている。
そういうところになら何度も行った事があるが、こんなお洒落な店は恥ずかしくて
入れない。今でもためらう程だ。
「ここへ来たら、ウインナーコーヒを飲むんやで」と確か教えてくれた。
名物なのだろうか?
「表面の生クリームが冷たくて、下には熱々のコーヒがあるんや」って。
確かに、「美味いもんやなあ」と思った記憶があるが、昔の事だ。
「今日のはちょっとぬるいやないか」
男性ボーカルの歌曲が静かに流れている。
静かに落ち着ける店だ。
店名 フランソワ
ジャンル 喫茶店
住所 下京区西木屋町通四条下ル
電話 075-351-4042
営業時間 10:00~23:00/無休
毎週金曜は、酒や茶に関する話です。