「おまえ知らんやろけど、ここのは京都で一番おいしいコーヒやで」
もう何十年も昔の事だ。本当に京都の事も世の中の事も知らない田舎者だったころ、友達
に連れてきてもらったのだった。
「ここのコーヒだけはミルク入りで飲むんや。それが美味いねんで」
それが誰だったかも忘れてしまった昔の話だ。
今回、たまたまイノダに来て、コーヒ飲む事になって、友達が、
「ここのはミルク入りで飲むんや」と聞いてはるか昔の事を思い出した。
しかし、もう遅い。普通のコーヒーを頼んだ後だった。
「なんやえらい普通やんか」
昔は、確かにおいしいコーヒーやと感動した記憶がある。
しかし、今飲むと特別の味というわけではない。
「やっぱりミルク入れんとあかんのかなあ?」そんなはずはない。
この程度のコーヒーなら大阪でもどこでも飲める。口が肥えたのか、人間がすれたのか、
味が落ちたのか?
昔、九州、小倉でものすごくおいしいコーヒー屋さんがあった。そこでコーヒーの淹れ方を
教えてもらったことがある。
コーヒーはネルドリップに尽きるのだそうだ。ペーパーでは駄目だと言うのだ。
そこの店では、1人前用の小さなネルドリップを熱い湯で洗って、湯切りをして、一人前だけ
コーヒを入れて、その上から、沸騰直前のお湯をゆっくりと周辺から回すようにじわじわっと
ドリップの中で細かい泡ができてそれが壊れないように、泡を育てるようにしながら淹れて
行くのだ。受けるポットもしっかり温めた陶器が一番いいということだった。
それを信じて、しばらくはネルドリップの濾し布を買ってきて一生懸命やっていた。
細かい泡が味をまろやかにして香りを立てるというのは茶道でも一緒なんやなあと思ったりした。
しかし、だんだん面倒になって、ペーパードリップでいいやと思うようになってしまった。
それ以来、ネルドリップで濾している店を見たことがない。
梅地下に小さい店だがおいしいコーヒー屋があるが、そこもペーパードリップだ。
淹れ方も大事だが、コーヒー豆の味も大事なので、そっちの重要性で殆ど決まる場合が多いの
だろう。
それにしても今のイノダだったら、フランソワの方がましやなあ。
味は大差ないけど、雰囲気がええやんか。
さて、最近は又時間ができたから、ネルドリップを復活させてやってみようかなあ。
毎週金曜は酒や茶に関する話です。
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