昨年の話だが、富岡鉄斎展を見に行った。
このころ京都に何度か行く用があって、丁度よかったという事もある。
泉屋博古館というのは始めてだが、地図で見ると哲学の道を北にあがったあたりだ。
行きはバスで行って帰りは歩いて帰ろうと決めてバスに乗った。
紅葉の盛りで観光の人が多い所に雨がふってきたのでバスは超満員だ。乗ったはいいが、
おりれるのか心配だったが。要所、要所の観光スポットで下りる人が多かったので、
最後は座ることができたくらいだ。
東山を背景になかなか景色のよいところにある。
青銅器の収集で有名だそうだが、富岡鉄斎もあるとは知らなかった。
「万巻の書を読み、万里の道を往く」最後の文人と言われた富岡鉄斎は、生き方として
あこがれがある。じつにかっこいいではないか。
特にこの人の漢籍の素養はすごいものだ。私の画を見る場合は必ず賛を先に読んでくれ
というだけあって、其の画を画く気分なり、要因なりをきちんと文章にしているのだ。
万里を行くというのは唯の旅好きというのではなくて、そういう素養の元に空想の上で
もあらゆるところに心は遊んで、まるでその場にいるかのように自在に画と文にできる
ということなので、まさに文人画の極致と言える。
まあそれで、えらい楽しみにして入ったわけだが、残念ながら、「これは」というような
すごい作品は殆どなかった。
もちろん全てが鉄斎を彷彿させる作品ばかりなのだが、期待の方がおおきすぎたのだ。
小さなスケッチブック風の作品が風俗を端的にとらえていて面白かった。
とまあこういう残念話なのであるが、実は昨年末、某所で個人所蔵の鉄斎作品2点の
掛け軸を見せて頂いた。
これは、素晴らしかった。全く息を飲むほど感動した。
その力強さ。しっかりした基本。
中国の故事を踏まえた題材のとりかた。
迫力ある色遣い。
全てが素晴らしかった。
やっぱりいいものを追いかけないといけないなあ。
毎週木曜は映画、音楽、書画に関する話です。