浅田次郎、「珍妃の井戸」
大作「蒼穹の昴」、「中原の虹」の間に入る作品。
「蒼穹の昴」の舞台の後、義和団事件が起こり、清朝の皇室が西安に非難する騒ぎの中で、光緒帝の側室、珍妃が死んだ。
自殺か他殺か、他殺なら犯人は誰、犯行の動機は・・
壮大な歴史絵巻の合間に、ちょっと推理小説のお遊びと、
浅田次郎は本当に多才です。
「蒼穹の昴」の主要な登場人物もそのままのキャラクターで登場するし、楽しい作品です。
神坂次郎、「藤原定家の熊野御幸」
この世の果ての地、神の宿る地、怨霊の宿る地、古代からそういう信仰の土地、熊野には、
苦難を乗り越えて詣でることで、神の地にいけるという信仰の下に、
多くの貴賎が訪れ、御幸も度々ありました。
藤原定家、和歌の天才、歌聖と謳われながら一方では後鳥羽上皇に才を愛でられながらも、
又、一方では、なかなか昇進させてもらえず、低い官位で歯軋りをしていたと何かの本で読んだ事があります。
この本では、後鳥羽上皇の熊野御幸の際、その先達として、宿所宿所に先行して、
宿の手配や行事の手配、一切をとりしきりることになり、
その苦労や、満たされぬ思いをぶつぶつと嘆きながら、あえぎあえぎこなしている様が、
目の前に浮かぶようで思わず笑ってしまいます。
それでも、お召しがあれば、ぼろぼろの心と体で駆けつけて、
きちんと歌を献呈するというのは、それは、プロの世界です。
さすがです。
良い本を読みました。
毎週火曜は最近夢中で読んだ本の話です。