旅を墨絵に。
時々、あの旅のあの場面が蘇ってくる。
あれを描きたい。これをこう表現したい。
いろんな記憶が乱れ飛ぶ。なかなか、これぞというのが出来へん。
同じところの記憶であっても、絵に現してみたらあら不思議、その時々でえらい違う。
そんなもんだ。
描く度に上手くなってる?
そう思いたいけど、そうはいかん。あの手この手で色々やってみなあきまへんのやわ。
今回は。
ナガルコットからチャングナラヤンの峠道。
ネパールを旅の中でも、このコースを歩いた時がとても印象に残っている。
カトマンズから1時間半ほどバスに乗って行った山の中の村である。
ナガルコットの村に一泊して、尾根伝いにチャングナラヤンという古都に向かった。
長閑な道をポクポクと、とても良い旅だった。
まるで桃源郷を歩いたみたい。
ナガルコットの宿。
泊まったのは、峠の端っこにある、絶壁の上の小さな宿。
「雲海リゾート」。
かっこいい名前ではないか。
この名前に釣られてそこまで行ったようなもんだ。
宿の部屋から、渺茫とした山々が連なる。時にはそれが雲海の中に、見えつ、隠れつ。
その向こうにヒマラヤが見える。
眼下には無数の棚田が。
そのうえを雲が流れる。
ええですなあ。
夜になると、月が出て、しかも、満天の星の中に居るのがわかる。
星がまたたく 旅をつづけてきてゐる 山頭火
ええですなあ。
ほんでまあ。こんな絵を描いて見た。

実際は、この日は曇り。星も山も殆ど見えへんかった。残念なり。
心の目でしっかり見届けた。
嘘も方便、絵の世界。
見てきたような嘘を描き。
いつかまた、来よう。今度はほんまもんを見る。
